忌明けに挨拶状のみ送る

忌明けの挨拶状は、香典返しなどとともに送ることが一般的です。そして、インターネット上で紹介されている文例も、香典返しとともに送ることが前提となっている場合が多いでしょう。

では、忌明けに挨拶状のみを送る場合の挨拶状は、どのような内容とすれば良いのでしょうか?今回は、香典返しとともに送るのではなく、忌明けの挨拶状のみを送る場合のマナーや文例についてくわしく解説します。

忌明けの挨拶状とは

忌明けの挨拶状とは、葬儀でお世話になった人などに、無事に忌明けを迎えたことを知らせる書状です。

日本では「死」は忌まわしいことであり、「穢れ」であると考えられています。そのため、家族が亡くなってから一定期間は「忌中」として、できるだけ外部との接触を避けて過ごすこととされてきました。

最近では、長期間自宅に籠っていては社会生活が立ち行かなくなるため、忌中であっても学校や会社へは通常どおり出向くことがほとんどです。ただし、正月のお祝いや結婚式など慶事への出席は、今でも憚られることが多いでしょう。

そして、この「忌」が無事に開けたことを知らせるのが、忌明けの挨拶状です。

忌明けの挨拶状はいつ送る?

忌明けの挨拶状は、いつ送るのでしょうか?これは宗教によって異なっており、それぞれ次のとおりです。

仏式の場合

仏教では、四十九日をもって忌明けを迎えるとされています。そのため、忌明けの挨拶状は、四十九日法要の後すみやかに送りましょう。

神式の場合

神式では、五十日祭をもって忌明けを迎えるとされています。そのため、忌明けの挨拶状は、五十日祭の後すみやかに送りましょう。

キリスト教式の場合

キリスト教には、「忌明け」の概念がありません。なぜなら、キリスト教において、そもそも死は忌まわしいものではないためです。

ただし、家族の死後、区切りとなる行事を終えたとの報告をする場合もあるでしょう。その場合には、次の行事を終えたことを知らせる内容とすることが一般的です。

  • カトリックの場合:30日目の追悼ミサ
  • プロテスタントの場合:1か月目の昇天記念式

忌明けに香典返しを送らず挨拶状のみを送っても良い?

忌明けの挨拶状は、香典返しとともに送ることが通例とされています。では、忌明けに香典返しを送らず、挨拶状のみを送っても良いのでしょうか?

忌明けの挨拶状は香典返しとともに送るのが基本

まず、香典返しが必要となる場合には、忌明けの挨拶状とともに香典返しをすることが基本です。別々に送る場合であっても、挨拶状が届いてから香典返しの品が届くまでにあまり日が開いてしまうと、不審に思われてしまうかもしれません。

香典返しが済んでいる場合は忌明けの挨拶状のみを送る場合もある

香典返しを送る必要がないケースでは、香典返しの品を送らず、忌明けの挨拶状のみを送る場合もあります。

たとえば、そもそも葬儀の際に香典を辞退しており受け取っていない場合や、葬儀当日に香典返しの品物を渡す「当日返し」としている場合などです。このような場合には忌明け後に香典返しをする必要はありませんが、忌明けした旨や葬儀のお礼を伝えたい場合もあるでしょう。

このようなケースでは、忌明けの挨拶状のみを送っても差し支えありません。

忌明けの挨拶状の基本マナー

忌明けの挨拶状を送る際には、どのような点に注意すれば良いのでしょうか?基本的なマナーは次のとおりです。

基本マナー

・縦書きで作成する
・句読点を使用しない
・時候の挨拶は記載しない
・奉書紙を使う
・忌み言葉に注意する

縦書きで作成する

忌明けの挨拶状は、縦書きで作成することが基本です。

最近では、比較的カジュアルな場面で送るものを中心に、挨拶状を横書きすることも珍しくなくなってきています。しかし、忌明けの挨拶状など弔事の場面で送る挨拶状を横書きにすることは、今も一般的とはいえません。

句読点を使用しない

忌明けの挨拶状では、句読点を使用しないことが基本です。これには、次のような理由があります。

句読点を使用しない理由

・句読点が文章を区切るものであることから、縁を切ることを連想させて縁起が良くないため
・伝統的な挨拶状に、句読点がなじまないため
・句読点は子どもが文章を読みやすいように使われ始めたものであることから、相手を子ども扱いしていると捉えられる可能性があるため

これは挨拶状全般に言えることですが、最近では挨拶状で句読点を使うことも珍しくなくなってきています。しかし、忌明けの挨拶状など弔事の場面では、今も句読点の使用は一般的ではないため、句読点の使用は避けた方が良いでしょう。

時候の挨拶は記載しない

時候の挨拶とは、「菊花の候」など挨拶状を送る季節に合った言葉を記載することで、挨拶状に季節感を添える表現です。ただし、忌明けの挨拶状など弔事の場面では、時候の挨拶を記載することは一般的ではありません。

奉書紙を使う

忌明けの挨拶状は、奉書紙を使用することが基本です。

奉書紙とは、白くてしっかりとした材質の和紙であり、古くから大切な要件を伝える際に使用されてきました。文具店やインターネット上などで購入することができますので、探してみると良いでしょう。

また、最近ではハガキなどで忌明けの挨拶状を送る場合もあります。ただし、ハガキはあくまでも略式となりますので、この点を念頭において使用しましょう。

忌み言葉に注意する

忌明けの挨拶状では、忌み言葉に注意しなければなりません。忌み言葉とは、その場面において縁起が悪く、避けるべきとされる表現です。

弔事の場面では、次のものなどが忌み言葉に該当します。

  • 生死を直接的に表す言葉:「死んだ」「生きていた頃」など
  • 不幸が続くことを連想させる言葉:「次々」「続けて」「重ね重ね」「再び」「追って」など

また、仏式の場合には、「迷う」や「浮かばれない」なども忌み言葉とされています。

忌明けの挨拶状の基本の書き方

忌明けの挨拶状は、基本の構成に沿って作成すれば、決して難しいものではありません。忌明けの挨拶状の基本構成は次のとおりです。

基本的な書き方

・頭語
・前文
・葬儀などへのお礼
・無事に忌明けを迎えた旨
・書中での挨拶を詫びる言葉
・結語

頭語

はじめに、頭語を記載します。頭語とは挨拶状における「ごめんください」にあたる表現です。

忌明けの挨拶状では、「拝啓」か「謹啓」を用いることが一般的でしょう。「拝啓」はもっとも一般的な頭語である一方で、「謹啓」はよりかしこまった印象となります。

前文

上で記載をしたとおり、忌明けを知らせる挨拶状では時候の挨拶は不要です。そのため、頭語に続けて、そのまま本題に入っても構いません。

ただし、「御尊家御一同様にはますます御清祥にお過ごしの事とお慶び申し上げます」などの前文は記載しても差し支えなく、このような表現を記載することで、相手への心遣いが伝わりやすくなるでしょう。

葬儀などへのお礼

本題のはじめに、葬儀などへのお礼を記載します。「先般 亡父 太郎儀 葬儀に際しましては 御多用中にもかかわらず御懇篤なる御弔慰を賜り心より厚く御礼申し上げます」などです。

なお、文例では「御懇篤なる御弔慰ならびに御厚志(御芳志)を賜り」などの表現も多く見受けられます。ここでいう「御厚志」や「御芳志」は香典などを表しており、香典などを一切受け取っていないにもかかわらずこれを入れることは、適切ではありません。

一方、死者への弔いや遺族を慰めることを表す「御弔慰」は、葬儀への参列などを指すと考えられるため、香典などを受け取っていない場合であっても記載できます。他にもさまざまな表現があり、一例としては次のものが挙げられます。

  • 香典などを一切受け取っておらず、葬儀への参列などのみを頂いた場合:「御弔慰を賜り」
  • 香典や供物、供花などを頂いた場合:「御弔慰ならびに御厚志(御芳志)を賜り」

無事に忌明けを迎えた旨

忌明けを知らせる挨拶状ですので、無事に忌明けを迎えた旨を記載しましょう。「お蔭をもちましてこのたび四十九日法要を滞りなく営み 忌明けを迎えることができました」など、区切りとなる行事を滞りなく終えたことを記載することで、忌明けを伝えることが一般的です。

書中での挨拶を詫びる言葉

本文の最後に、書中での挨拶を詫びる言葉を記載します。たとえば、「本来であれば早速拝眉の上御礼申し上げるべきところ 略儀ながら書中をもちまして御礼かたがた御挨拶申し上げます」などです。

忌明けの挨拶は本来、相手のもとに出向いて行うべきものであったためです。

なお、「拝眉」とは、相手に会うことをへりくだって示す表現であり、挨拶状でよく使用されます。また、似た表現に「拝趨」があり、こちらは相手のもとへ出向いていって会うことをへりくだって表す言葉です。

結語

最後に、結語を記載します。結語は頭語とセットで使用するものであり、使用した頭語によって使用する結語が決まります。

主な組み合わせは、次のとおりです。

  • 頭語が「拝啓」の場合:「敬具」や「敬白」など
  • 頭語が「謹啓」の場合:「謹言」や「謹白」など

忌明けに挨拶状のみを送る際の文例

忌明けに、挨拶状のみを送る場合の文例は、それぞれ次のとおりです。

仏式で忌明けの挨拶状のみを送る場合の文例

仏式の場合における忌明けを知らせる挨拶状の文例は、次のとおりです。

謹啓 御尊家御一同様にはますます御清祥にお過ごしの事とお慶び申し上げます

先般 亡父 太郎儀 葬儀に際しましては 御多用中にもかかわらず御懇篤なる御弔慰を賜り

心より厚く御礼申し上げます

お蔭をもちましてこのたび四十九日法要を滞りなく営み 忌明けを迎えることができました

ここに生前の故人に賜りました御厚情に深謝申し上げます

本来であれば早速拝眉の上御礼申し上げるべきところ 

略儀ながら書中をもちまして御礼かたがた御挨拶申し上げます 謹 白

こちらは戒名を記載しない前提の文例です。故人の戒名を記載する場合には、「お蔭をもちましてこのたび (戒名) 四十九日法要を滞りなく営み」などとすると良いでしょう。

神式で忌明けの挨拶状のみを送る場合の文例

神式の場合における、忌明けを知らせる挨拶状の文例は次のとおりです。

謹啓 御尊家御一同様にはますます御清祥にお過ごしの事とお慶び申し上げます

先般 亡父 太郎儀 帰幽に際しましては 御多用中にもかかわらず御懇篤なる御弔慰を賜り

心より厚く御礼申し上げます

お蔭をもちましてこのたび五十日祭を滞りなく営み 忌明けを迎えることができました

ここに生前の故人に賜りました御厚情に深謝申し上げます

本来であれば早速拝趨の上御礼申し上げるべきところ 

略儀ながら書中をもちまして御礼かたがた御挨拶申し上げます 謹 白

神式の場合には、故人が亡くなったことを「帰幽」と表現します。また、忌明けとなる行事は四十九日ではなく、五十日祭です。

キリスト教式で忌明けの挨拶状のみを送る場合の文例

先ほども触れたように、そもそもキリスト教には忌明けという概念がありません。そのため、忌明けを伝える挨拶状を送ることはないでしょう。

ただし、ここでは区切りとなる行事を終えたことを報告する前提として、挨拶状の文例を紹介します。

謹啓 御尊家御一同様にはますます御清祥にお過ごしの事とお慶び申し上げます

先般 亡父 太郎儀 帰天に際しましては 御多用中にもかかわらず御懇篤なる御弔慰を賜り

心より厚く御礼申し上げます

お蔭をもちましてこのたび三十日目の追悼ミサを滞りなく相済ませました

ここに生前の故人に賜りました御厚情に深謝申し上げます

本来であれば早速拝眉の上御礼申し上げるべきところ 

略儀ながら書中をもちまして御礼かたがた御挨拶申し上げます 謹 白

なお、キリスト教は宗派によって死の捉え方や区切りとなる行事名が少し異なっており、文例はカトリックを前提としています。プロテスタントの場合には、帰天ではなく「召天」、行事は追悼ミサではなく「召天記念式」などが基本ですが、実際の行事名を記載すれば問題ありません。

まとめ

香典をそもそも受け取っていない場合や、香典を「当日返し」などとした場合には、忌明け後の香典返しは必要ありません。その場合であっても、葬儀などでお世話になった相手には挨拶状を送って忌明けを知らせると良いでしょう。

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