遅れて届いた香典への挨拶状

香典とは、ご霊前に供えるお花やお香に代わる金品です。葬儀を営んだ場合には、通夜や葬儀の場面で贈られることが多いでしょう。

しかし、葬儀に参列しなかった人などから、遅れて香典が贈られる場合もあります。最近では、家族葬とするケースが増えているため、亡くなったことを後から知った人が香典を持って訪れることも少なくありません。

では、遅れて届いた香典へのお返しや挨拶状は、どのようにすれば良いのでしょうか?今回は、遅れて届いた香典への対応についてくわしく解説します。

香典返しとは

香典返しとは、もらった香典へのお返しのことです。一般的には、香典の3分の1から半額程度のお返しをすることがマナーであるとされています。

とはいえ、当然ながら現金をそのままお返しするわけではありません。金銭や商品券でお返しをすることは失礼にあたる可能性が高いため、避けるべきです。

一般的には、タオルや石鹸、お茶などのいわゆる「消えもの」を贈ることが多いでしょう。最近では、カタログギフトもよく活用されています。

香典返しはいつ行う?

香典返しは、いつ行うものなのでしょうか?香典返しをする時期は次のとおりです。

原則:四十九日の忌明け後

香典返しは、原則として四十九日の忌明け後、すみやかに(おおむね1ヶ月以内に)送ることが一般的です。葬儀の後で遅れて香典をもらった場合であっても、忌明け前にもらったのであれば、このタイミングで香典返しをすると良いでしょう。

また、「香典」自体は仏教用語ではあるものの、神式やキリスト教式の場合でも葬儀に際して金銭を贈ったり、お返しをしたりする風習は存在します。この場合のお返しも、それぞれ区切りとなる行事の後すみやかに行うべきとされています。その行事は神式では「五十日祭」、キリスト教式のプロテスタントでは「記念式」、キリスト教式のカトリックでは「追悼ミサ」などです。

なお、最近では葬儀当日に香典返しをする「当日返し」をするケースも増えています。この場合には、原則として後日の香典返しは必要ありません。

ただし、当日返しの場合のお返しはあらかじめ用意した品物を渡すこととなるため、思いがけず高額な香典を頂いた相手にはお返しが不足してしまいます。そのため、高額な香典を頂いた場合には、後日改めて不足分のお返しをする必要があるでしょう。

忌明け後に遅れて香典が届いた場合:すみやかに

故人が亡くなったことを後から知った人などから、遅れて香典が届く場合もあります。最近では家族葬を営む場合が増え、葬儀などを終えてから周囲に死亡を知らせることも多いことから、忌明け後に遅れて香典が届くケースも少なくないでしょう。

この場合であっても、原則として香典返しは必要です。遅れて届いた香典にお返しをするタイミングは、香典を頂いてからおおむね1週間から10日後が目安となります。

なお、遅れて届いた香典への対応を避けたい場合には、死亡を知らせる挨拶状に、香典などを辞退する旨を記載しておくことも検討すると良いでしょう。

香典返しの挨拶状の基本文例

香典返しは従来、相手のもとへ出向いて直接渡すものとされていました。しかし、最近では多忙な人も多いことから、郵送での香典返しが主流となっています。

郵送で香典返しをする場合には、品物のみを贈るのではなく、挨拶状を添えて送りましょう。

香典返しに添える挨拶状の例文は、仏式、神式、キリスト教式の場合で、それぞれ次のとおりです。まずは、通常の香典返しに添える挨拶状の文例を紹介します。

仏式の場合(戒名あり)

仏式で、かつ戒名がある場合に香典返しに添える挨拶状の例文は、次のとおりです。

謹啓 御尊家御一同様には益々ご清祥にお過ごしの御事と存じます
先般 父太郎儀 葬儀の際には御多用中にもかかわらず御懇篤なる御弔慰ならびに御厚志を賜り 誠に有難く厚く御礼申し上げます
お陰をもちまして このたび
  (戒  名)
四十九日法要を滞りなく相営みました
つきましては供養のしるしまでに心ばかりの品をお送り致しましたので 何卒御受納くださいますようお願い申し上げます
早速拝趨の上御礼申し上げるべきところ 失礼ながら書中をもって御礼かたがた御挨拶申し上げます  謹 白

文中の「御弔意」とは、哀悼の意を伝えることです。葬儀への参列やお悔やみの言葉をかけてくれたことなどを指します。

また、「御厚志」とは親切な心遣いを意味しますが、ここでは香典や供花などを贈ってくれたことを指すと考えておくとよいでしょう。つまり、「御懇篤なる御弔慰ならびに御厚志を賜り」を平たくいえば、「お悔やみの言葉をかけてくれて、また香典までいただいて」という意味です。

戒名がある場合には戒名を記したうえで、四十九日法要を無事に終えたことを報告しましょう。そのうえで、香典返しを送ったことを記載します。

ただし、「香典返しを送りました」などと書かず、「供養のしるしまでに心ばかりの品をお送り致しました」などと表現するとスマートです。

最後に、書中での挨拶を詫びる一文で締めましょう。これは、香典返しは本来相手のもとへ出向いて行うべきであるところ、略式である郵送での挨拶を詫びる表現です。なお、「拝趨」とは、相手のものへ出向くことを、へりくだって表す言葉です。

仏式の場合(戒名なし)

仏式で、かつ戒名がない場合に香典返しに添える挨拶状の例文は、次のとおりです。

謹啓 御尊家御一同様には益々ご清祥にお過ごしの御事と存じます
先般 父太郎儀 葬儀の際には御多用中にもかかわらず御懇篤なる御弔慰ならびに御厚志を賜り 誠に有難く厚く御礼申し上げます
お陰をもちまして このたび四十九日法要を滞りなく相営みました
つきましては供養のしるしまでに心ばかりの品をお送り致しましたので 何卒御受納くださいますようお願い申し上げます
早速拝趨の上御礼申し上げるべきところ 失礼ながら書中をもって御礼かたがた御挨拶申し上げます  謹 白

戒名がない場合には戒名を書かないのみであり、その他の表現は戒名がある場合と変わりありません。

神式の場合

神式の場合に「香典返し」に添える挨拶状の例文は、次のとおりです。なお、神式の場合には香典返しとはいわず、「偲び草」などと表現します。

謹啓 御尊家御一同様には益々ご清祥にお過ごしの御事と存じます
先般 父太郎儀 帰幽の際には御多用中にもかかわらず御懇篤なる御弔慰ならびに御厚志を賜り 誠に有難く厚く御礼申し上げます
お陰をもちまして このたび五十日祭の祭事を滞りなく相営みました
つきましては偲び草のしるしまでに心ばかりの品をお送り致しましたので 何卒御受納くださいますようお願い申し上げます
早速拝趨の上御礼申し上げるべきところ 失礼ながら書中をもって御礼かたがた御挨拶申し上げます  謹 白

神式の場合には、故人が亡くなったことを「帰幽」と表現します。そして、区切りとなる行事は四十九日ではなく「五十日祭」ですので、誤らないよう注意しましょう。

また、「供養」という言葉は仏教独自のものであるため、神式では使用しません。そのため、「供養のしるし」ではなく、「偲び草のしるし」などとします。

キリスト教式の場合

キリスト教式の場合に「香典返し」に添える挨拶状の例文は、次のとおりです。

なお、キリスト教式の場合にも香典返しとは言わず、神式と同じく「偲び草」などと表現します。

謹啓 御尊家御一同様には益々ご清祥にお過ごしの御事と存じます
先般 父太郎儀 召天の際には御多用中にもかかわらず御懇篤なる御弔慰ならびに御厚志を賜り 誠に有難く厚く御礼申し上げます
お陰をもちまして このたび召天記念式を滞りなく相営みました
つきましては偲び草のしるしまでに心ばかりの品をお送り致しましたので 何卒御受納くださいますようお願い申し上げます
早速拝趨の上御礼申し上げるべきところ 失礼ながら書中をもって御礼かたがた御挨拶申し上げます  謹 白

この文例は、プロテスタントの場合のものです。プロテスタントの場合には、故人が亡くなったことを「召天」といい、区切りとなる行事は「召天記念式」などとなります。

一方、カトリックの場合には、故人が亡くなったことを「帰天」などと表現します。また、区切りとなる行事は「追悼ミサ」などです。

宗派によって表現が異なるため注意しましょう。

忌明け後に遅れて届いた香典へのお返しに添える挨拶状の文例

忌明け後に遅れて届いた香典へお返しをする場合、上の例文ではそぐわない部分が生じます。この場合には、相手が葬儀には参列していないことが多いうえ、忌明けはすでに迎えているためです。

この場合における挨拶状の例文は、次のとおりです。なお、ここでは仏式である前提の文例を紹介します。

謹啓 御尊家御一同様には益々ご清祥にお過ごしの御事と存じます
この度は父太郎 永眠に際し過分なる御厚志を賜り 誠に有難く厚く御礼申し上げます
父が生前賜りました御厚情に心より御礼申し上げます
つきましては供養のしるしまでに心ばかりの品をお送り致しました
何卒御受納くださいますようお願い申し上げます
早速拝趨の上御礼申し上げるべきところ 失礼ながら書中をもって御礼かたがた御挨拶申し上げます  謹 白

葬儀には参列していないため、参列へのお礼は省きます。併せて、時期によっては無事に忌明けを迎えた表現も省いて良いでしょう。

ただし、忌明け後すぐに香典を頂いた場合で、忌明けを報告する挨拶状を送っていない場合などには、「お陰をもちまして このたび四十九日法要を滞りなく相営みました」などの文章は残しても構いません。

香典返しの挨拶状で知っておくべき基本マナー

香典返しの挨拶状を作成する際には、次の基本のマナーを押さえておきましょう。

基本的なマナー

・句読点は使用しない
・縦書きで記載する
・時候の挨拶を記載しない
・忌み言葉を使用しない
・宗教ごとに異なる表現に注意する

句読点は使用しない

香典返しの挨拶状では、通常の場合も遅れて届いた香典へのお返しの際にも、句読点は使用しません。

句読点は、元々子どもが文章を読みやすくなるように使用され始めたものであり、正式な挨拶状には馴染まないとされているためです。

縦書きで記載する

香典返しの挨拶状は、縦書きで作成しましょう。

最近では、挨拶状を横書きとするケースも増えてきました。しかし、弔事の場面では伝統的なマナーが重んじられる傾向にあるため、原則どおり縦書きとすることが一般的です。

時候の挨拶を記載しない

香典返しなど弔事にまつわる挨拶状では、原則として時候の挨拶は記載しません。時候の挨拶とは、「薫風の候」など、季節感を表すフレーズです。

ただし、香典が遅れて届いた場合で、忌明けからずいぶん時間が経っている場合には、時候の挨拶を添えても良いでしょう。

時候の挨拶を記載する場合の書き出しは、「謹啓 薫風の候 御尊家御一同様には益々ご清祥にお過ごしの御事と存じます」などとなります。

忌み言葉を使用しない

忌み言葉とは、その場面で縁起が悪いとされ、避けるべきとされる表現です。香典返しなど弔事の場面では、次の言葉などが忌み言葉とされています。

  • 不幸が重なることを連想させる言葉:「次々」「重々」「重ね重ね」「続々」「返す返す」「追って」など
  • 生死を直接表す言葉:「生きていた頃」「死ぬ」「死んだ」など

これらの言葉をうっかり使用してしまわないよう注意しましょう。

宗教ごとに異なる表現に注意する

普段何気なく使用している言葉でも、宗教によっては馴染まない場合があります。そのため、弔事にまつわる挨拶状では宗教ごとに異なる表現に注意しましょう。

たとえば、「供養」や「成仏」などは仏教用語であり、神式やキリスト教式では使用しません。神式であるにもかかわらず「故人の成仏を願っています」などと書いてしまうと、恥をかいてしまう可能性があるでしょう。

まとめ

香典が遅れて届いた場合であっても、お返しをすることがマナーです。四十九日の忌明け後に香典が届いた場合には、受け取ってから1週間から10日以内を目安として香典返しをすると良いでしょう。

そして、香典返しに添える挨拶状では、基本のマナーや宗教ごとの表現に注意しなければなりません。しかし、身内が亡くなった後は何かと忙しく、自分で挨拶状の文案を練る時間が取れない場合も少なくないでしょう。

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