横書きの挨拶状

最近では、挨拶状を「横書き」で作成することも少なくありません。では、挨拶状を横書きにする場合、どのような点に注意をして作成すれば良いのでしょうか?

今回は、横書きの挨拶状の書き方や注意点などについて詳しく解説します。

挨拶状とは

挨拶状とは、転勤や事務所移転など状況の変化が生じた際などに、取引先などお世話になっている相手へ送る書状のことです。また、暑中見舞いなど、季節の挨拶として送る場合もあります。

最近では、メールなどで簡易的にお知らせや状況伺いを済ませてしまうことも増えているようです。

確かに、単に要件を伝えるのみであれば、メールなどで済んでしまうかもしれません。しかし、挨拶状は単に事実を知らせるのみならず、相手へ敬意を示す役割も果たします。

節目ごとにきちんとした挨拶状を相手へ送ることは、ビジネスマナーの一つであるといえます。

挨拶状に「横書き」か「縦書き」かのルールはある?

挨拶状に、横書きか縦書きかのルールはあるのでしょうか?

挨拶状は縦書きが基本

元々、挨拶状は縦書きで作成することが基本とされていました。これは、日本古来の文書が縦書きであることに由来します。

そのため、より伝統を重んじるべき場面や年配の人へ挨拶状を送る際などには、縦書きで作成すると良いでしょう。縦書きで挨拶状を作成することで、よりフォーマルで引き締まった印象を与えることができます。

横書きの挨拶状も増えている

最近では、横書きの挨拶状も珍しくありません。横書きだからといって失礼などということはありませんので、挨拶状の内容や送る相手の属性などに合わせて選択すると良いでしょう。

挨拶状にはさまざまなマナーがありますが、その根幹にあるのは、送付する相手への配慮です。パソコンやスマートフォンは横書きであることが大半であり、これらの使用に慣れている世代にとっては、横書きのほうが読みやすいともいえます。

挨拶状を横書きにする場合の書き方

横書きで挨拶状を作成する場合には、どのような手順で作成すれば良いのでしょうか?横書きでの挨拶状の書き方は次のとおりです。

横書きにする場合の書き方

・日付を記載する
・宛名を記載する
・差出人を記載する
・頭語を記載する
・時候の挨拶を記載する
・本文を記載する
・結語で文を締める

日付を記載する

A4サイズなどの用紙で挨拶状を作成する場合には、挨拶状の最上部の右端に、挨拶状を送付する日付を記載します。日付は必ずしも「〇年〇月〇日」まで書く必要はなく、「〇年〇月」のように月までを記載しても構いませんし、「〇年〇月吉日」のように吉日表記でも構いません。

横書きの場合には、日付の数字は算用数字(「四月」などの漢数字ではなく、「4月」など)とすることが一般的です。

なお、ハガキやカード形式の挨拶状の場合や手書きの挨拶状の場合には、本文と結語の下に日付を記載することが多いといえます。

宛名を記載する

A4サイズなどの用紙で挨拶状を作成する場合、日付から1行下げた左端に、送付先の宛名を記載します。適切な敬称を付けるのを忘れないようにしましょう。

なお、あらかじめ印刷をしたハガキやカード形式の挨拶状を送る場合には封筒などにのみ宛先を記載し、挨拶状自体には宛名を記載しないことも珍しくありません。

差出人を記載する

A4サイズなどの用紙で挨拶状を作成する場合には、宛名から1行下げた右端に、差出人名を記載します。日付を本文と結語の下に記載する場合には、差出人名も日付の下に記載します。

頭語を記載する

挨拶状は、いきなり本文から書き始めることは適切ではありません。はじめに、「拝啓」や「謹啓」など、頭語から書き始めることがマナーです。

頭語にはさまざまな種類がありますが、挨拶状の場合には「拝啓」か「謹啓」を使用することが大半でしょう。一般的な挨拶状では「拝啓」を使い、社長就任の挨拶などより改まった挨拶状では「謹啓」を使うことが多いといえます。

なお、次で解説をする時候の挨拶を省略していきなり本文へ入る際には「前略」という頭語を用いますが、挨拶状で時候の挨拶を省略することは適切ではないため、一般的に「前略」は使いません。

時候の挨拶を記載する

頭語の次に1文字分ほどのスペースを空け、時候の挨拶から書き始めます。頭語と時候の挨拶は、同じ行に続けて書いていくことが一般的です。

時候の挨拶とは、次のようなものです。

相手が企業などである場合

・「早春の候、貴社ますますご繁栄のこととお慶び申し上げます」
・「薫風の候、貴社におかれましては益々ご清栄のことと心よりお慶び申し上げます」など

相手が個人である場合

・「盛夏のみぎり 〇〇様におかれましては益々のご清祥のこととお慶び申し上げます」
・「初秋のみぎり 皆様ますますご健勝のこととお慶び申し上げます」など

この、「早春」「薫風」「盛夏」「初秋」などは、季節によって使い分けましょう。また、「候」と「みぎり」はどちらでも構いませんが、「候」は表現が固く、「みぎり」の方が、やややわらかい印象となります。

なお、季節によらず使うことができる言葉として、「時下」があります。「時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます」などと使用します。

こちらも挨拶状に使用することができる表現ですが、見る人によっては季語よりも簡略であると捉えられる可能性がありますので、使うシーンに注意しましょう。

本文を記載する

時候の挨拶の下から、挨拶状の本題となる本文を記載します。本題は、簡潔かつ想いが伝わるよう丁寧に記載しましょう。

たとえば、転勤の挨拶状の文例は次のとおりです。

==

さて、私こと

このたび株式会社挨拶 東京支店勤務を命ぜられ過日着任致しました

大阪支店在勤中は公私にわたり格別のご厚情を賜り まことに有難く厚く御礼申し上げます 新任地におきましても微力ながら職務に精進致す所存でございますので

何卒今後とも一層のご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます

まずは略儀ながらお礼かたがたご挨拶申し上げます

==

なお、「さて、私こと」が右端にあるのはレイアウトのずれではなく、挨拶状においては、文書の右端に記載するのが基本です。

結語で文を閉める

本文の最後に、結語を記載して文章を終えましょう。結語とは、「敬具」「謹白」など頭語とセットになった言葉のことです。

使うことのできる結語の種類は、頭語によって次のように決まっています。

 頭語結語
一般的な挨拶状拝啓
拝呈
啓上
敬具
敬白
拝具
改まった挨拶状謹啓
恭啓
粛啓
謹白
謹呈
敬具
謹言
謹白
頓首
敬白

たとえば頭語が「拝啓」であるにもかかわらず結語が「謹言」となっていれば、ちぐはぐな表現となってしまいます。どの頭語にどの結語が使えるのか、意識しておくと良いでしょう。

挨拶状を書く際の注意点

挨拶状を書く際には、さまざまな決まりごとが存在します。挨拶状を横書きとする際の主なマナーは次のとおりです。

注意点

・句読点は使わない
・段落おとしはしない
・忌み言葉に注意する
・誤字脱字に注意する

句読点は使わない

挨拶状には、句読点は使わないのが基本です。これは、句読点が「縁を切る」ことを連想させてしまうためであるといわれています。

また、古来では正式文書には句読点は使わなかったため、その名残であることも理由の一つです。

最近では、読みやすさを重視して挨拶状でも句読点を使うことがあるようですが、正式には使わないものであるため、特に理由がなければ句読点は使わない方が良いでしょう。

段落おとしはしない

段落おとしとは、文章のはじめに1文字分のスペースをあけてから書き始めることです。

一般の文章では段落おとしをおこなうことが基本である一方、挨拶状では段落おとしはしないことが通常です。これは、日本の伝統的な文章で段落おとしが使われていなかったことに由来します。

忌み言葉に注意する

挨拶状の種類によっては、忌み言葉に注意しましょう。忌み言葉とは、悪い展開などを予想させてしまう言葉です。

たとえば、結婚祝いの挨拶状では「別れる」や「離れる」などの言葉はタブーとなります。

また、「度々」「近々」「くれぐれも」などの重ね言葉も、結婚を繰り返すことを連想させてしまうため避けるべき表現です。

また、開業祝いの挨拶状では、「燃える」や「火」などが忌み言葉にあたります。送る挨拶状の内容に応じて、うっかり忌み言葉を使ってしまうことのないよう、充分に注意してください。

誤字脱字に注意する

挨拶状を作成する際には、誤字脱字に注意しましょう。万が一誤字脱字をしてしまった際、修正テープなどで直すことはマナー違反です。

多量に印刷をしてしまってから誤字脱字に気づくことのないよう、印刷発注前によく確認することをおすすめします。

「様」や「御中」など敬称を正しく使う

挨拶状を発送する際には、「様」や「御中」などの敬称を正しく使用しましょう。基本的には、「様」「先生」「御中」の三択となります。

それぞれの使い分けは、次のとおりです。

注意点

:特定の相手に挨拶状を送る場合
先生:弁護士や税理士などの士業に挨拶状を送る場合
御中:会社全体や部署全体など、団体宛に挨拶状を送る場合

たとえば、次のような記載は誤りです。

  • 「営業部 印刷太郎 御中」:個人名に「御中」が付くことはありません。正しくは、「営業部 印刷太郎 様」です。
  • 「印刷太郎 部長様」:役職名に「様」を付けるのは不自然です。正しくは、「部長 印刷太郎 様」です。
  • 「株式会社印刷 営業部様」:部署名に「様」を付けるのは不自然です。正しくは、「株式会社印刷 営業部 御中」です。

挨拶状を横書きする場合の封筒の書き方

挨拶状は、必ずしも封筒に入れて送らなければならないわけではありません。ハガキに挨拶状の本文を印刷し、そのままの状態で送るケースも多く存在します。

一方、封筒に入れて挨拶状を送ることで、よりフォーマルな印象を与えることとなります。より丁寧な印象を与えたい場合には、封筒に入れて送ると良いでしょう。

最後に、横書きの挨拶状を封筒に入れて送る際のマナーを紹介します。

挨拶状を横書きする場合の封筒の書き方

・封筒は縦書きが基本
・表面に宛先を記載する
・裏面に差出人を記載する
・洋封筒の場合には封入口を右にする

封筒は縦書きが基本

挨拶状自体が横書きであったとしても、挨拶状の封筒は縦書きで使用することが基本となっています。これは、封筒の短辺に口のある和封筒であっても、封筒の長辺に口のある洋封筒であっても同様です。

ただし、比較的カジュアルな挨拶状の場合、洋封筒の場合には、横書きで使用することも誤りではありません。

表面に宛先を記載する

封筒の表面には、宛先を記載しましょう。宛先は、特に誤りのないよう注意してください。氏名や会社名の誤りは、特に失礼に当たります。

また、たとえば相手が取締役から代表取締役になったとの連絡を受けていたにもかかわらず旧役職のままで挨拶状を出してしまったり、事務所移転の連絡を受けていたにもかかわらず古い所在地宛に送ってしまったりするなどの誤りも避けるべきです。

あらかじめ送付先のリストをよく確認し、誤りのないよう注意しましょう。

裏面に差出人を記載する

封筒の裏面には、差出人名を記載しましょう。そのうえで、和封筒の場合にはフタの綴じ目に「〆」記号を記載するのが慣例です。

一方、洋封筒では「〆」を記載しないことが一般的です。

洋封筒の場合には封入口を右にする

洋封筒に宛名を縦書きする場合、封筒の向きには決まりがあります。

原則として、封筒表面から見た場合、左側に封筒のフタがくるように宛名を記載します。裏面から見れば、右側からフタを閉じることとなります。

一方、弔事などの場合には、封筒表面から見て右側に封筒のフタがくるように記載してください。

まとめ

挨拶状の作成には、さまざまなルールやマナーが存在します。マナーを守り、相手にとって失礼のないよう作成しましょう。

挨拶状の作成で困ったら、ぜひ挨拶状のテンプレートを活用されることをおすすめします。

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