9月に送る挨拶状の書き方

挨拶状は、本題に入る前に「時候の挨拶」を記載することがマナーです。そして、この時候の挨拶には季節に沿った内容を記すことが通例とされており、挨拶状を送る季節によって適切なフレーズが異なります。

今回は、9月に送る挨拶状で使える書き出しの文書を初旬、中旬、下旬に分けて紹介するとともに、挨拶状の基本構成などについても詳しく解説します。

挨拶状とは

挨拶状とは、相手に近況を伝えたり季節に応じて相手の状況伺いなどをしたりする書状全般のことです。

相手に近況を伝える挨拶状としては、たとえば結婚の挨拶状や退職の挨拶状、転勤の挨拶状などが挙げられます。また、会社として送付する社長交代の挨拶状や役員就任の挨拶状なども、相手に状況を伝える挨拶状の一つであるといえます。

一方、季節に応じて送る挨拶状としては、年賀状や暑中見舞い、寒中見舞いなどがあります。

最近ではEメールなど便利なツールが多いため、あえて書状で挨拶状を送る機会は減ってしまっているかもしれません。しかし、要所ごとに適切な挨拶状を送ることで、相手への敬意や相手を大切に想う気持ちを伝えることができます。

特にビジネスでは、今も挨拶状の送付はマナーの一つであるとされていますので、重要な局面では引き続き挨拶状を活用してください。

挨拶状の基本の構成

挨拶状には、基本とされる構成があります。

この構成どおりでないからといって必ずしもマナー違反というわけではありません。しかし、特に挨拶状の送付に慣れていない場合には、大きな失敗をしてしまうことのないよう、基本の構成に従って挨拶状を作成すると良いでしょう。

挨拶状の基本構成は、次のとおりです。

頭語

挨拶状は、頭語から書き始めることが通例です。

もっともよく使用される頭語に、「拝啓」があります。そのため、挨拶状では原則として「拝啓」を使用すると考えておくと良いでしょう。

応用編として、たとえば会社から送付する社長交代の挨拶状など、よりかしこまった挨拶状においては「謹啓」などを使用します。この「謹啓」は、目上の人に対してより敬意を示す際に使用する頭語です。

また、相手から受け取った挨拶状へ返信をする際には、「拝復」を使用しましょう。

なお、頭語には「前略」もありますが、これは次でお伝えする「時候の挨拶」を省略する際に使用する頭語です。そのため、使用をするのは親しい相手へカジュアルな挨拶状を送る場合などに限定されます。

時候の挨拶

頭語に続けて、時候の挨拶を記載します。時候の挨拶とは、たとえば次のような文言です。

  • 「残暑の候 貴社ますますご隆昌のこととお慶び申し上げます」
  • 「初秋のみぎり 〇〇様におかれましてはますますご清祥のこととお慶び申し上げます」

この、「残暑」や「初秋」などが季節ごとに異なる文言です。9月に使用できる文言については、後ほど詳しく解説します。

これに続く「~の候」「~のみぎり」は、いずれであっても構いません。ただし、「~のみぎり」の方が、やや柔らかい印象となります。

そして、その後に相手の健康や幸せ、成功を願う文章を記載することが通例です。

挨拶状を送る相手が企業などであれば、「ご隆昌」や「ご盛栄」、「ご隆盛」など、ビジネスの発展を願う文言を記載しましょう。一方、挨拶状を送る相手が個人であれば、健康を願う「ご健勝」や幸せな生活を願う「ご清祥」などを使用します。

本題

次に、挨拶状を送る目的である本題を記載します。伝えるべき内容を簡潔かつ丁寧に伝えるようにしましょう。伝える内容はあまり詰め込まず、1つないしは2つ程度の内容にすると読みやすい挨拶状となります。

結語

本題の最後は、結語で締めます。

使うことのできる結語は使用をした頭語によって決まりますので、基本の組み合わせを覚えておくと良いでしょう。主な組み合わせは、次のとおりです。

  • 頭語に「拝啓」を使用した場合:「敬具」や「敬白」など
  • 頭語に「謹啓」を使用した場合:「謹言」や「謹白」など
  • 頭語に「拝復」を使用した場合:「敬具」など
  • 頭語に「前略」を使用とした場合:「草々」など

日付

結語の後ろに、挨拶状を送る日付を記載します。

日付は、「令和4年9月1日」など具体的に日付までを特定をしても構いません。また、たとえば「令和4年9月」のみの表記や「令和4年9月吉日」などの表記でも原則としては問題ありません。

付記事項

挨拶状に付記事項がある場合には、ここに記載します。

付記事項とは、たとえば周年記念パーティーへ招待する挨拶状であればパーティーの開催日時や場所などの情報、事務所移転の挨拶状であれば移転日や移転先の情報などです。

差出人名

最後に、差出人名や差出人の住所などの情報を記載しましょう。

9月使える時候の挨拶:上旬の場合

9月上旬は、夏から秋へと徐々に移り変わっていく季節です。9月上旬に送る挨拶状で使える時候の挨拶には、次のものがあります。

なお、漢語調とは「残暑」「新秋」などのように漢字のみで表記される文言で、主にビジネスの場で使用されます。一方、口語調はプライベートなど、親しい相手へ挨拶状を送る場合に使われることが一般的です。

漢語調

9月上旬に使える漢語調の文言は、次のとおりです。

  • 残暑:8月23日頃から白露である9月8日頃まで使用できます
  • 処暑:8月23日頃から白露である9月8日頃まで使用できます
  • 新秋:9月上旬に使用します
  • 早秋:9月上旬に使用します
  • 初秋:9月上旬に使用します

口語調

9月上旬に使える口語調の文言には、次のものなどがあります。あまり難しく考えず、その季節から感じた言葉を使用すると良いでしょう。

  • 暑さ過ぎやらぬ毎日ですが
  • 澄んだ空に澄みきった心で1日をスタートできる好季節
  • 朝の空気に初秋の気配が感じられる頃となりました
  • 心地よい秋日和が続くこのごろ

9月に使える時候の挨拶:中旬の場合

9月も中旬となると、少しずつ暑さもやわらぎ秋の気配をより感じられることでしょう。

9月中旬に送る挨拶状で使える時候の挨拶には、次のものがあります。あまり難しく考えず、その季節から感じた言葉を使用すると良いでしょう。

漢語調

9月中旬に使える漢語調の文言は、次のとおりです。

  • 白露:9月8日頃から次の秋分の前日である9月22日頃まで使用できます
  • 爽秋:9月8日以降9月いっぱい使用できます
  • 野分:9月中旬以降9月いっぱい使用できます
  • 仲秋:9月8日頃から10月7日頃まで使用できます
  • 秋晴:9月8日頃から10月7日頃まで使用できます
  • 清涼:9月8日頃から10月8日頃まで使用できます

口語調

9月中旬に使える口語調の文言には、次のものなどがあります。あまり難しく考えず、その季節から感じた言葉を使用すると良いでしょう。

  • 穏やかに秋が深まる今秋
  • さわやかな秋晴の季節となりました
  • 風に揺れるすすきに風情を感じる爽秋の季節となりました

9月に使える時候の挨拶:下旬の場合

9月下旬は、より秋が深まっていく季節です。9月下旬に送る挨拶状で使える時候の挨拶には、次のものがあります。

漢語調

9月下旬に使える漢語調の文言は、次のとおりです。

  • 爽秋:9月8日以降9月いっぱい使用できます
  • 野分:9月中旬以降9月いっぱい使用できます
  • 仲秋:9月8日頃から10月7日頃まで使用できます
  • 秋晴:9月8日頃から10月7日頃まで使用できます
  • 清涼:9月8日頃から10月7日頃まで使用できます
  • 秋冷:9月下旬に使用します
  • 秋雨:9月下旬に使用します

口語調

9月下旬に使える口語調の文言には、次のものなどがあります。

  • 虫の音に深まる秋を感じる季節となりました
  • ひと雨ごとに秋の深まりを感じる今日このごろ
  • 朝夕はしだいに涼しさを感じる頃となりましたが
  • 秋分も過ぎ 季節の変わり目をいかがお過ごしでしょうか

通年で使える時候の挨拶

時候の挨拶には、通年で使うことのできる「時下」という表現もあります。たとえば、次のように使用します。

  • 企業あて:「拝啓 時下ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます」
  • 個人あて:「拝啓 時下ますますご健勝のこととお慶び申し上げます」

挨拶状において、この「時下」を用いたからといって失礼にあたるわけではありません。実際、ビジネス文書であれば、この表現が用いられることが多いでしょう。

ただし、送る季節に沿った時候の挨拶を記載することで、より季節感のある丁寧な挨拶状である印象を与えることができます。

挨拶状を送る際のその他の注意点

挨拶状を送る際には、次の点にも注意をしましょう。

適切な時期に送付する

挨拶状は、その内容に合わせて適切な送付時期があります。次の挨拶状はそれぞれ、次の時期に送付することが適切です。

  • 贈り物のお礼:頂いたらすぐ(おおむね3日以内)
  • 年賀状:1月1日から1月7日
  • 寒中見舞い:1月8日から2月4日
  • 暑中見舞い:梅雨明けから8月7日
  • 開業・会社設立:開業1か月前から2週間前
  • 事務所移転:移転1か月前まで
  • 社長交代:新社長就任後1週間以内

送る時期を逸してしまうと挨拶状の意味が半減してしまう他、マナーを知らない人や企業であると捉えられてしまう可能性があります。

特に開業や移転、社長就任などの際には他の多くの手続きと重なりバタバタとしてしまう可能性がありますが、適切な時期に挨拶状を送ることができるよう、あらかじめ準備を進めておくと良いでしょう。

誤字脱字をしないように注意する

挨拶状を送る際には、誤字脱字をしてしまわないよう注意しましょう。

特に、相手の氏名や社名の間違いは大変失礼にあたります。誤った内容で印刷をしてしまわないよう、印刷をする前に送付先リストをよく確認されることをおすすめします。

単純な誤字脱字の他、たとえば婚姻などで名字が変わった旨の連絡を受けたにもかかわらず、リストが旧姓のままとなっていたり、昇進をしたにもかかわらず役職名が以前のままとなっていたりすることなどが考えられます。

また、事務所や本社の移転情報が更新されていなければ、せっかく送った挨拶状が宛先不明で戻ってきてしまう可能性もあるでしょう。

なお、万が一印刷後に誤字脱字を見つけた場合に、修正テープや二重線などで消すことはマナー違反です。この場合には、手間であっても新たな用紙で書き直すようにしてください。

適切な敬称を使用する

挨拶状を送る際には、適切な敬称を使用しましょう。挨拶状で使用する敬称は、原則として「様」「先生」「御中」の3択です。それぞれの使用シーンは、次のとおりです。

  • 「様」:送付先が個人である場合に、一般的に使用する敬称です。「田中一郎様」のように一般個人に送る場合はもちろんのこと、「株式会社挨拶 営業部部長 田中一郎様」や「株式会社挨拶 代表取締役 挨拶太郎様」のように、団体内の個人宛に送る場合にも使用します。
  • 「先生」:送付先が弁護士などの士業や恩師である場合に使用する敬称です。「弁護士 山田太郎先生」や「印刷高等学校 鈴木花子先生」などのように使用します。
  • 「御中」:送付先が企業や部署など団体である場合に使用する敬称です。「株式会社挨拶 御中」や「株式会社挨拶 営業部 御中」のように使用します。

まとめ

9月は、夏から秋へと移り変わり、さらに中旬から下旬にかけて徐々に秋が深まっていく季節です。適切な時候の挨拶を記すことで、より丁寧で季節感のある挨拶状を作ることができるでしょう。

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