挨拶状の書き方

挨拶状には、その書き方にさまざまなマナーやルールが存在します。せっかく挨拶状を送るのであれば、相手に不快な思いをさせてしまわないよう、マナーやルールを守って作成するようにしましょう。

今回は、挨拶状の書き方について詳しく解説します。

挨拶状とは

挨拶状とは、転職などの節目や季節の挨拶などのため、取引先などお世話になっている相手へ送る書状のことです。単に要件を伝えるのみならず、相手への敬意を示すため、挨拶状という形式を取ります。

最近では、メールなどで要件を伝えることも増えていますが、適切なタイミングで適切な挨拶状を送ることは、今でも重要なビジネスマナーの一つであるといえるでしょう。

挨拶状の基本の書き方:縦書きの場合

挨拶状には、基本の書き方が存在します。まずは、縦型の場合の書き方の基本について解説していきましょう。

頭語

挨拶状では、いきなり本文から書き始めるのは適切ではありません。はじめに、「拝啓」などの頭語を記載してから書き始めましょう。

頭語の種類については、後ほど解説します。

時候の挨拶

頭語の次に1文字分ほどを空け、同じ行で続けて時候の挨拶を記載します。

時候の挨拶とは、「陽春のみぎり、〇〇様のますますご清祥のこととお喜び申し上げます」など、季節に沿った挨拶のことです。時候の挨拶には、季節に合わせてある程度決まった言い回しが存在します。

本文

時候の挨拶の次に、本文を記載します。本文には、この挨拶状で伝えたいことを完結かつ丁寧に記載しましょう。

なお、1通の挨拶状での要件は、1件とすることが基本です。

結語

本文の最後は、「敬具」などの結語で締めます。結語は頭語とセットになっており、記載した頭語によって選択できる結語が決まっています。

結語については、後ほど解説します。

日付

縦書きの場合には、本文と結語の次に日付を記載することが一般的です。縦書きのため、日付の数字は漢数字で記載してください。挨拶状の発送日を記載しましょう。

差出人名

日付の次の行あたりに、差出人名を記載します。差出人名は、上から書き始めるのではなく、用紙の下の方に記載をしましょう。

宛名

最後に、上の方から宛先を記載します。「様」や「先生」などの敬称まで忘れずに記載しましょう。

挨拶状の基本の書き方:横書きの場合

横書きの場合の挨拶状の書き方は、次のとおりです。

日付

文書の最上段の右端に、日付を記載します。日付は、挨拶状の発送日を記載しましょう。

宛名

文書の左端から、宛名を記載します。「様」や「先生」、「御中」などの敬称まで忘れずに記載しましょう。

差出人名

文書の右端に、差出人名を記載します。

頭語

文の始めは、縦書きの場合と同様に「拝啓」などの頭語から記載します。頭語の種類は、後ほど解説します。

時候の挨拶

頭語の次に、時候の挨拶を記載しましょう。時候の挨拶とは、「早春の候、貴社におかれましてはますますご隆盛のこととお慶び申し上げます」など季節の挨拶のことです。

時候の挨拶の例は、後ほど紹介します。

本文

時候の挨拶の次に、本文を記載します。本文には、この挨拶状で伝えたいことを完結かつ丁寧に記載してください。

結語

本文の最後は、「敬具」など頭語に沿った結語でしめましょう。結語については、次で解説します。

挨拶状の書き方:頭語と結語

頭語と結語には、挨拶状を送る場面ごとのルールがあります。また、頭語と結語はセットとなっており、たとえば頭語が「拝啓」であるにもかかわらず結語が「草々」というのはちぐはぐです。

頭語と結語について、次のルールを知っておきましょう。

 頭語結語
一般的な挨拶状拝啓
拝呈
啓上
敬具
敬白
拝具
改まった挨拶状謹啓
恭啓
粛啓
謹白
謹呈
敬具
謹言
謹白
頓首
敬白
返信の場合拝復
復啓
謹復
敬具
敬白
拝具
拝答
再信の場合再啓
追啓
再呈
敬具
敬白
拝具
再拝
略式前略
冠省
略啓
草々
早々
不一

なお、一般的に、挨拶状で略式は好ましくありません。迷う場合には、「拝啓」と「敬具」を使用すれば、よほど間違いはないでしょう。

挨拶状での時候の挨拶の書き方

挨拶状には、時候の挨拶がつきものです。では、時候の挨拶はどのように記載すれば良いのでしょうか?

個人から挨拶状を送付する場合には、「年が明け まだ来ぬ春が待ち遠しく感じられます」「まだ残暑が続いておりますが 〇〇様はいかがお過ごしでしょうか」のように、柔らかな表現をすることが一般的です。

一方、ビジネスで挨拶状を送る場合には、次のように記載をすることが多いでしょう。

時候の挨拶の書き方

法人宛:「〇〇の候 貴社におかれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます」「〇〇のみぎり 貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます」
個人宛:「〇〇の候 〇〇様におかれましては益々健勝のこととお慶び申し上げます」「〇〇のみぎり 貴殿におかれましてはますますご清祥のこととお慶び申し上げます」

この「〇〇」には、季節ごとの季語が入ります。たとえば、「新春の候 貴社におかれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます」などとなります。

ここでは、月ごとの例を紹介します。

1月

1月に使われる主な季語は、次のとおりです。

  • 厳寒
  • 大寒
  • 新春
  • 小寒
  • 初春
  • 寒冷
  • 厳冬

また、柔らかな表現としては次のようなものがあります。

  • 年が明け まだ来ぬ春が待ち遠しく感じられます
  • ますます寒さが厳しくなってまいりました

2月

2月に使われる主な季語は、次のとおりです。

  • 余寒
  • 立春
  • 春寒
  • 節分
  • 春浅
  • 厳寒
  • 余寒
  • 春寒
  • 寒風

また、柔らかな表現としては次のようなものがあります。

  • 立春を過ぎ 本格的な春の訪れが待たれるころとなりました
  • 春とは名ばかりの厳しい寒さが続いています

3月

3月に使われる主な季語は、次のとおりです。

  • 早春
  • 春暖
  • 浅春
  • 弥生

また、柔らかな表現としては次のようなものがあります。

  • 寒さのなかに春の気配を感じるころとなりました
  • 春分を過ぎ 桜の開花が待たれるころとなりました

4月

4月に使われる主な季語は、次のとおりです。

  • 陽春
  • 桜花
  • 春暖
  • 惜春
  • 春風
  • 葉桜
  • 陽春
  • 若葉

また、柔らかな表現としては次のようなものがあります。

  • 桜の花のたよりが聞かれるころとなりました
  • 桜の花が満開を迎えています

5月

5月に使われる主な季語は、次のとおりです。

  • 新緑
  • 薫風
  • 立夏
  • 晩春
  • 惜春
  • 暮春
  • 余花
  • 卯月

また、柔らかな表現としては次のようなものがあります。

  • 風薫る季節となりました
  • 緑が美しい季節になりました

6月

6月に使われる主な季語は、次のとおりです。

  • 梅雨
  • 入梅
  • 紫陽花
  • 向暑
  • 初夏
  • 梅雨寒

また、柔らかな表現としては次のようなものがあります。

  • 梅雨明けが待ち遠しい毎日です
  • 梅雨明けの空がすがすがしい季節となりました

7月

7月に使われる主な季語は、次のとおりです。

  • 盛夏
  • 猛暑
  • 大暑
  • 炎暑
  • 夏祭

また、柔らかな表現としては次のようなものがあります。

  • 連日厳しい暑さが続いています
  • 空の青さが夏の到来を告げています

8月

8月に使われる主な季語は、次のとおりです。

  • 残暑
  • 秋暑
  • 晩夏
  • 立秋
  • 処暑
  • 納涼
  • 残暑
  • 残炎

また、柔らかな表現としては次のようなものがあります。

  • 夏も終わりを告げようとしていますが
  • 秋まだ遠く 厳しい残暑が続いています

9月

9月に使われる主な季語は、次のとおりです。

  • 初秋
  • 野分
  • 白露
  • 秋分
  • 秋桜
  • 新秋
  • 初秋
  • 秋冷
  • 仲秋

また、柔らかな表現としては次のようなものがあります。

  • 朝夕はめっきりしのぎやすくなりました
  • 朝の空気に爽秋の気配が感じられる季節となりました

10月

10月に使われる主な季語は、次のとおりです。

  • 秋冷
  • 菊花
  • 霜降
  • 紅葉
  • 仲秋
  • 寒露
  • 秋雨
  • 秋涼
  • 秋晴
  • 夜長
  • 秋麗
  • 初霜

また、柔らかな表現としては次のようなものがあります。

  • 秋の夜長 いかがお過ごしでしょうか
  • 爽やかな秋晴れの日が続いております

11月

11月に使われる主な季語は、次のとおりです。

  • 晩秋
  • 向寒
  • 立冬
  • 落葉
  • 深秋
  • 霜寒

また、柔らかな表現としては次のようなものがあります。

  • 朝晩はめっきり寒くなってまいりました
  • 暦の上では冬となり 朝夕はだいぶ肌寒くなってきました

12月

12月に使われる主な季語は、次のとおりです。

  • 初冬
  • 師走
  • 歳末
  • 冬至
  • 大雪
  • 木枯
  • 寒冷
  • 新雪
  • 歳晩

また、柔らかな表現としては次のようなものがあります。

  • 師走に入り 何かと多忙な日々が続いております
  • 今年も残りわずかとなりました

挨拶状の書き方:宛名

挨拶状を送る際には、宛名の書き方にも注意が必要です。宛名は、次のポイントを押さえて記載しましょう。

封筒に横書きする場合

宛名を封筒に横書きする場合には、まず、切手が右上となるように封筒を配置します。その上で、左から2文字分ほどをあけて相手の住所を書き始めます。

住所を書く高さは、切手の上部よりやや下から始めるとバランスが良いでしょう。ビル名やマンション名がある場合には、住所は二行となります。住所の二行目は、一行目の書き出しから1文字分ほど下げて書き始めることが一般的です。

個人宛である場合には、住所の下に相手の氏名を記載します。文字は、住所よりもやや大きく記載してください。氏名が、封筒の上下の中央あたりに来るように配置するとバランスがよく見えます。

会社宛である場合には、住所の下にまず、相手の会社名を記載します。会社名は、住所の二行目と同じく、住所一行目の書き出しから1文字分ほど下げて書き始めるとバランスが良いでしょう。

その下に、相手の部署名があれば部署名を記載します。部署名は、会社名の書き出しよりもさらに1文字分ほど下げて書き始めます。

その下に、相手の役職名と氏名を書きましょう。役職名が短いときは、「取締役 印刷太郎様」のように役職名と氏名を一行で記載します。

一方、役職名が長いときは、役職名のみで一行を使い、その下に氏名を書くと良いでしょう。氏名は、他よりもやや大きく記載してください。

封筒に縦書きする場合

宛名を封筒に縦書きする場合には、右上に記載した郵便番号の最後の数字か、最後の数字ともう1つ前の数字の中央あたりの下に、郵便番号から1文字分ほどをあけて住所を書き始めます。縦書きの場合には住所の番地などに算用数字は使わず、漢数字で記載しましょう。

ビル名やマンション名まで、略さずに記載してください。ビル名やマンション名が長く住所が二行になる際は、二行名は一行目の中央やや上あたりかから書き始めるとバランスが良いでしょう。

個人宛である場合には、住所の左に相手の氏名を記載します。文字は、住所よりもやや大きく記載してください。

氏名の書き始めを住所の書き始めよりも1文字分ほど下げ、かつ、氏名が封筒の左右の中央あたりに来るように配置するとバランスがよく見えます。

会社宛である場合には、住所の左にまず、相手の会社名を記載します。会社名は、住所一行目の書き出しから1文字分ほど下げて書き始めるとバランスが良いでしょう。

その左に、相手の部署名があれば部署名を記載します。部署名は、会社名の書き出しよりもさらに1文字分ほど下げて書き始めます。

その左に、相手の役職名と氏名を書きましょう。氏名は、他よりもやや大きく記載してください。

宛名へ付ける敬称

宛名へ付ける敬称は、「様」「御中」「先生」の3パターンであることが一般的です。それぞれ、次のように使い分けましょう。

使い分け

「様」:一般個人宛や、会社など団体内部の特定個人宛に挨拶状を送る場合に記載します
「御中」:法人宛や部署宛など、特定の相手ではなく団体宛てに送る場合に記載します
「先生」:弁護士・税理士などの士業や恩師宛に挨拶状を送る場合には、「様」の代わりに「先生」を使用します

挨拶状を送る際の注意点

挨拶状を送る際には、次の点に注意しましょう。

注意点

・誤字脱字に注意する
・原則として句読点は使わない
・原則として段落おとしは行わない
・送るタイミングに注意する
・テンプレートを活用する

誤字脱字に注意する

挨拶状は、誤字脱字をしないようよく注意して作成しましょう。また、もし誤字脱字をしてしまった場合には修正テープなどでの修正はせず、面倒でも新たな用紙で書き直すようにしてください。

特に、相手の氏名や社名などの誤字脱字は絶対に避けましょう。単純な誤字脱字の他、相手から案内を受けていたにもかかわらず古い役職名を記載してしまったり旧姓を記載してしまったりするミスにも注意が必要です。

原則として句読点は使わない

挨拶状には、原則として句読点(「。」や「、」)は使いません。

これは、挨拶状が日本古来の文化であり、昔は句読点を使う習慣がなかったためであるといわれています。また、句読点を使うことが「縁を切る」を連想させるからという説も有力です。

ただし、句読点がないと読みづらくなってしまうため、最近では比較的カジュアルな内容の挨拶状を中心に、句読点を使う場合もゼロではありません。

原則として段落おとしは行わない

段落おとしとは、文を書く際に最初の一文字分をあけてから書き始めるルールのことです。パソコンで文書に慣れ親しんだ方にとっては、「インデント」のほうがイメージしやすいかもしれません。

この段落おとしは、挨拶状では行わないことが基本ルールとなっています。

送るタイミングに注意する

挨拶状には、それぞれ適切なタイミングが存在します。

たとえば、退職の挨拶状であれば、遅くとも退職してから1ヶ月以内に送付すべきです。また、事務所移転の挨拶状は、移転の1か月から2週間ほど前には届くように手配すべきでしょう。

適切なタイミングで送付できるよう、計画的に準備しておくことをおすすめします。

テンプレートを活用する

挨拶状の書き方には、段落おとしをしないことや句読点や使わないことなど、独特のマナーが多数存在します。そのため、慣れていない人が自分で一から作成をすると、形式に沿わない失礼なものとなってしまうかもしれません。

そのため、挨拶状を送付する際には、できるだけテンプレートを活用しつつ作成することをおすすめします。

まとめ

挨拶状の書き方には、普段の文書とは異なるマナーやルールが存在します。最近では、さほど伝統的なマナーを気にしない人も増えていますが、せっかく挨拶状を送る以上はきちんとマナーを守り、相手に敬意を示したいものです。

しかし、自分で一から問題のない挨拶状を書くことは容易ではありません。そのような際、ぜひご活用いただきたいのが、当サイト「挨拶状印刷」です。

挨拶状印刷では場面に沿った適切な挨拶状のテンプレートを多数取り揃えているため、自分で一から文章を作る必要はありません。もちろん、状況に合わせて自分で文章のカスタマイズをすることも可能です。

挨拶状でお困りの際には、ぜひ挨拶状印刷のサービスをご利用ください。