挨拶状を送る際には、さまざまなマナーが存在します。中でも、宛名の書き方を誤ってしまうと、相手にとって非常に失礼に当たる場合があるため、特に注意が必要です。
今回は、挨拶状への宛名の書き方について詳しく解説します。
挨拶状の宛名を書く場所
挨拶状の宛名は、どこへどのように記載すれば良いのでしょうか?
なお、挨拶状は封筒に入れず、ハガキのままで送ることも可能です。ただし、封筒に入れた方がよりフォーマルな印象を与えることができるため、たとえば社長交代の挨拶状などより改まった場面である場合には、封筒に入れて送ることを検討すると良いでしょう。
また、式典の開催など返信用封筒を同封する必要がある場合には、封筒での発送となります。では、挨拶状の宛名を書く場所について確認しておきましょう。
ハガキの場合
ハガキで挨拶状を送る場合には、ハガキの片面に挨拶状の文面を印字し、その裏面に宛名を記載します。
ハガキで挨拶状を送る際の宛名は「縦書き」か「横書き」か
挨拶状をハガキで送る場合の宛名は、原則として「縦書き」をすると良いでしょう。横書きをしたからといって郵便が届かないわけではなく、必ずしも誤りというわけではありませんが、横書きはカジュアルな印象を与えてしまうからです。
ハガキで挨拶状を送る場合の宛名の書き方
ハガキの場合には、まず相手の郵便番号を右上に記載します。はじめから郵便番号の枠が設けられていればその場所へ記載し、枠がない場合であっても通常枠がある場所へ書けば問題ありません。
相手の住所は、その郵便番号の最も右の枠か、最も右の枠とその1つ左の枠の間の下あたりで、1文字分ほどを下げた位置から書き始めるとバランスが良いでしょう。縦書きの場合には、住所の数字はすべて漢数字で記載します。
マンション名やビル名などがある場合には、マンション名やビル名などは二行目に書きましょう。二行目の住所は、一行目の住所の中央あたりから書き始めるとバランスが取りやすいといえます。
一般個人あてに送る場合には、住所の左側、ハガキの左右の中心あたりに相手の氏名を記載します。住所から1文字文ほどを下げ、住所よりもやや大きな文字で書きましょう。
会社などへ送る場合には、住所の左側に一行ほどを空け、相手の社名を記載してください。会社名は、一行目の住所より1文字分ほど下げた位置から記載します。
その左に、相手の所属する部署名を記載しましょう。部署名は、会社名よりさらに1文字分を下げて書き始めるとバランスが取れます。
さらに、その左に相手の役職名と氏名を記載します。これは、会社名と同じ高さから書き始めると良いでしょう。氏名は、他の文字よりもやや大きく記載します。なお、役職名が長い場合には、役職名のみで一行を使っても構いません。
和封筒の場合
和封筒とは、封筒の短辺に封筒の口がある形状の封筒です。和封筒には縦の長さが横の長さの2倍以上ある「長形封筒」とそれ以外の「角型封筒」がありますが、挨拶状の場合には、普通郵便が84円で送ることのできる小さめなサイズの長形封筒がよく使われます。
和封筒で挨拶状を送る場合には、封筒の表面(封筒のフタを閉じた際に、封筒のフタが見えない側)に宛先を記載します。
和封筒で挨拶状を送る際の宛名は縦書きか横書きか
和封筒への宛名は、縦書きをすることが基本となります。そもそも、挨拶状を送る和封筒は縦長の長形封筒であることが多いため、横書きをするとやや不自然です。
文字のバランスなどは上で解説したハガキの場合とほぼ同じですので、そちらを参照してください。
洋封筒の場合
洋封筒とは、封筒の長辺に封筒の口がある形状の封筒です。カード状の挨拶状を封筒に入れて送る際には、洋封筒を用いることが多いでしょう。
洋封筒で挨拶状を送る際の宛名は「縦書き」か「横書き」か
洋封筒への宛名は、縦書きでも横書きでも構いません。ただし、縦書きの方がよりフォーマルな印象を与えることができます。
洋封筒は封筒の向きに注意する
洋封筒に宛名を縦書きして挨拶状を送る場合、封筒の向きに注意しなければなりません。なぜなら、封筒表面から見て右側に封筒のフタがくるように記載してしまうと、これは弔事用となってしまうからです。
裏面から見れば、左側からフタを閉じることとなりますので、この弔事用の閉じ方を「左封じ」と呼びます。
弔事以外の挨拶状を送る場合には、封筒表面から見た場合、左側に封筒のフタがくるように宛名を記載しましょう。裏面から見れば、右側からフタを閉じることとなりますので、「右封じ」と呼びます。
洋封筒で挨拶状を送る場合の宛名の書き方
洋封筒に宛名を横書きする場合には、まず、切手の位置が右上となるように、封筒を配置しましょう。その上で、封筒の左端から2文字分ほどをあけて、相手の郵便番号を書き始めます。
そして、郵便番号の下、郵便番号の書き始めと同じくらいの位置から、住所を記載してください。マンション名やビル名がある場合には無理に一行に書くとバランスが悪くなってしまうため、二行に分けて記載します。住所の二行目は、一行目の書き出しから1文字分ほど下げた位置から書き始めると良いでしょう。
個人宛である場合には、住所の下に宛先となる相手の氏名を記載します。封筒の上下の中央あたりに氏名が来るように配置するとバランスが取りやすいでしょう。氏名は、住所よりも少し大きく記載してください。
会社宛である場合には、住所の下にまず、相手の会社名を記載します。会社名は、住所一行目の書き出しから1文字分ほど下げた位置から書き始めます。
その下に、相手の部署名を記載します。部署名は、会社名の書き出しよりもさらに1文字分ほど下げて書き始めると良いでしょう。
その下に、相手の役職名と氏名を記載します。役職名が短いときは、「部長 挨拶太郎 様」のように、役職名と氏名を一行で記載することが通例です。
一方、役職名「クリエイティブディレクター」などと長い場合には、役職名のみで独立した一行を使い、その下の行に氏名を書くとよいでしょう。氏名は、他の文字よりもやや大きく記載します。
なお、洋封筒に宛名を縦書きする場合の書き方は、ハガキでの書き方を参照してください。
挨拶状の宛名は何を書く?
挨拶状の宛名には、相手の情報をどこまで記載すれば良いのでしょうか?個人宛の場合と法人宛の場合とに分けて解説します。
なお、郵便物は機械で振り分けが行われます。そのため、見栄えの面からのみならず、誤配や配送の遅れを防ぐためにも、宛先は丁寧に記載しましょう。
個人宛の場合
挨拶状を送る相手が一般個人である場合には、次の事項を明記します。
・郵便番号:不明な場合には、日本郵便のホームページから調べることができます。
・住所:マンション名やアパート名、号室までもれなく記載します。
・氏名:フルネームを記載します。適切な敬称を付けるのを忘れないようにしましょう。
法人宛の場合
会社内部の相手に挨拶状を送る場合には、次の事項を明記します。
・送付先住所:会社によっては、支店などいくつかの拠点がある場合があります。送りたい相手の勤務先部署の所在地をよく確認してから送付しましょう。
・部署名:相手の部署名を正確に記載します。特に大きな会社では、部署名が違うと届くまでに時間がかかる可能性があります。なお、代表取締役など特に部署名がない場合には、記載する必要はありません。
・役職名:相手の役職名を正確に記載します。
・氏名:相手の氏名をフルネームで記載します。適切な敬称を付けるのを忘れないようにしましょう。
なお、相手の部署名や役職名は、異動などにより変わる可能性があります。異動や昇進の案内を受けていたにもかかわらず、以前の部署へ送ってしまったり以前の役職名を記載して送ってしまったりすることのないよう、送付先リストの管理に注意しましょう。
挨拶状の宛名に付ける敬称と注意点
挨拶状を送る際には、宛名につける敬称に注意しましょう。敬称の誤りは相手にとって失礼であるのみならず、常識がないと思われて恥をかいてしまう可能性があるからです。
「様」を使用する場合
挨拶状の宛先が個人であれば、敬称には「様」を使うことが一般的です。
「印刷太郎様」のように個人宅へ送る場合はもちろん、「株式会社印刷 代表取締役 印刷太郎様」「株式会社印刷 部長 印刷次郎様」のように、団体内部の特定の者へ送る場合も「様」を使います。
また、宛先が複数人である場合にも、「様」は一つにまとめることなく、それぞれの氏名に付しましょう。
なお、役職名に「様」とつけることは適切ではありません。たとえば、「印刷太郎 社長様」「印刷次郎 部長様」のような表現は誤りです。
「御中」を使用する場合
挨拶状の宛先が会社全体や部署全体など団体宛であれば、敬称には「御中」を使います。たとえば、「株式会社印刷 御中」「株式会社印刷 総務部 御中」などです。
このように、「御中」は団体に付ける敬称であるため、個人名に「御中」をつけることはありません。たとえば、「株式会社印刷 営業部 印刷花子 御中」などは、誤った用法の代表例です。
この場合には、上で解説したとおり「様」を使いましょう。
「殿」を使用する場合
「お殿様」などのイメージからか、個人名の後に「殿」を使った方が「様」よりも丁寧ではないかと感じる人もいるかもしれません。しかし、実は「殿」は目下の相手にしか使うことができず、「様」よりも位(くらい)の落ちる敬称です。
また、通常はたとえ部下など目下の相手にであってもあえて「殿」を用いる必要性は乏しく、個人あてであればすべて「様」を使った方が間違いないでしょう。
「先生」を使用する場合
「先生」は、挨拶状の宛先が恩師である場合や弁護士などの士業である場合に使う敬称です。「先生」を使う場合には、「様」に代えて「先生」を使うこととなります。
そのため、「挨拶太郎 先生様」などのように、「先生」と「様」を併記することはありません。
「各位」を使用する場合
「各位」とは「皆様」という意味であり、宛先の一人ひとりを敬う表現です。「お客様各位」「関係者各位」などの表現を見たことがある人も多いのではないでしょうか。
しかし、「各位」はパソコンなどで作成したビジネス文書内の宛先やメールの宛先に使う表現であり、ハガキや封筒の宛名欄に使うことは適切ではありません。
「行」を使用する場合
「行」は、返信用封筒や返信用ハガキなどを同封する際に、自社名や自分の氏名の後に付ける表現です。自分で自分の氏名などに「様」などと記載することを避けるため、便宜上「行」などと記載します。
この「行」は敬称ではありませんので、相手に対して使うことは適切ではありません。また、返信用封筒などにあらかじめ「行」と印字されている場合には、これを二重線で削除して「様」や「御中」へ書き直しましょう。
返信用封筒のマナーについては、改めて次で解説します。
挨拶状に返信用封筒がついている場合の宛名などの注意点
周年祭や結婚式など式典の招待状には、返信用のハガキや封筒がついている場合があります。この返信用ハガキや封筒を返送する際には、どのような点に注意すれば良いのでしょうか?
ここでは、3つの注意点を紹介します。
すみやかに返送する
招待状などへの返信は、できるだけすみやかにおこなうことがマナーです。
返信自体をしないことや返信期限が設けられている場合にその期限を過ぎてしまうことはもってのほかですが、期限に余裕がある場合であっても受け取ったらすぐに予定を確認し、できるだけ早く返送すると良いでしょう。なぜなら、周年祭や結婚式などを主催する側にとっては参加人数などによって必要な準備が変わる可能性があり、できるだけ早く人数を把握しておきたいと考えることが多いためです
また、すみやかに返信することにより、相手への敬意を示すことにもつながります。
宛先の「行」を消して「様」などへ直す
返信用封筒や返信用ハガキには、返送先である相手の社名や氏名の下に「行」や「宛」などの文字が印字されていることが少なくありません。
返送をする際には必ずこの「行」や「宛」を削除し、社名や部署名など団体行きであれば「御中」と、個人宛であれば「様」と書き直しましょう。複数人の連名となっている場合には、それぞれの氏名に「様」をつけることがマナーです。
「行」や「宛」は修正テープなどで消すのではなく、二重線で削除するのが通例となっています。宛名が縦書きの場合には横の二重線、縦書きの場合には縦書きの二重線で削除してください。
自分の住所や氏名を明記する
返信用ハガキや返信用封筒には、差出人である自分の住所や氏名などの情報を明記しましょう。ハガキや封筒に差出人名を書くべき欄が設けられている場合もありますが、仮に特別そのような欄がなかったとしても、差出人名は記載すべきです。
差出人名を書く欄が設けられていればその欄に記載し、特に欄がない場合には次の場所へ記載します。
- ハガキの場合:ハガキの宛名面の左下
- 封筒の場合:封筒の裏面
差出人名を縦書きにするか横書きとするかは、あらかじめ記載された返送先の宛先の記載と合わせておくと良いでしょう。なお、差出人の明記は返信用ハガキや返信用封筒を送る際のみならず、郵便を送る際全般のマナーです。
まとめ
挨拶状を送る際には、宛名の書き方にもさまざまなマナーが存在します。せっかく挨拶状を送っても、あて名書きを誤ると常識のない人だと思われてしまったり相手に失礼となったりする可能性がありますので、間違いのないよう注意して作成してください。
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