挨拶状に「春暖の候」などその季節に合った時候の挨拶を記載することで、ほんのりと季節感を漂わせることができます。挨拶状を送る際には、ぜひその季節に合った表現を添えたいものです。
では、3月に送る挨拶状で使用できる表現には、どのようなものがあるのでしょうか?今回は、3月の挨拶状で使える季節の挨拶表現をまとめて紹介します。
挨拶状とは
挨拶状とは、こちらの近況やお礼を相手に伝えたり、相手の近況を伺ったりする書状のことです。
最近では、Eメールなどさまざまな通信手段が発達しているため、書状で挨拶状を送る機会は減っているかもしれません。しかし、適切な時期に適切な挨拶状を送ることで、用件のみならず、相手に対する敬意や相手を大切に思う気持ちなどを伝えることが可能となるでしょう。
挨拶状の基本構成
挨拶状を送り慣れていない方にとって、挨拶状は難しく感じることもあるでしょう。しかし、基本の構成さえ覚えれば、挨拶状は決して難しいものではありません。
挨拶状の基本構成は、次のとおりです。
・頭語
・時候の挨拶
・安否の挨拶
・本題
・結びの挨拶
・結語
頭語
挨拶状は原則として、頭語から書き始めます。挨拶状で使用するもっとも一般的な頭語は「拝啓」であり、これは話し言葉での「こんにちは」に相当するものです。
また、目上の相手に挨拶状を送る場合やかしこまった場面で送る挨拶状では、「謹啓」がよく用いられます。
時候の挨拶
頭語に続けて、時候の挨拶を記載します。時候の挨拶とは、「春分の候」や「日を追うごとに春も深まる今日このごろ」など、挨拶状に季節感を添える表現です。
この「春分の候」などの表現を「漢語調」といい、「日を追うごとに春も深まる今日このごろ」などの表現を「口語調」といいます。ビジネスシーンでは「漢語調」がよく用いられる一方で、女性がプライベートで送る挨拶状では「口語調」が用いられることが多いでしょう。
3月に使える時候の挨拶は、後ほどまとめて紹介します。
安否の挨拶
時候の挨拶に続けて、安否の挨拶を記載します。安否の挨拶は挨拶状が企業宛であるのか一般個人宛であるかによって異なっており、代表的な表現はそれぞれ次のとおりです。
・企業宛の場合:「貴社ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます」「貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます」など
・個人宛の場合:「皆様ますますご清祥のこととお慶び申し上げます」「〇〇様におかれましてはますますご健勝にお過ごしのことと存じます」など
このように、企業宛の場合には成功や発展を願うフレーズを、個人宛の場合には健康や幸せを願うフレーズを記載します。
本題
ここまでの「頭語」、「時候の挨拶」、「安否の挨拶」をまとめて「前文」といいます。これに続けて、挨拶状の本題を記載します。
挨拶状の本題は、相手に伝えたい内容を簡潔かつ丁寧に記載しましょう。
結びの挨拶
本題の最後に、結びの挨拶を記載します。3月に使える結びの挨拶や季節を問わずに使える結びの挨拶は、後ほどまとめて紹介します。
また、後ほど紹介する表現に加えて、本来であれば対面などで挨拶すべき要件の場合には「略儀ながら書中をもって御挨拶申し上げます」など、書中での挨拶を詫びる文言を記載することが一般的です。
結語
挨拶状の最後は、結語で締めます。結語とは、話し言葉での「さようなら」に相当するもので、頭語とセットで使用するものです。
使用することのできる頭語は、使用をした頭語によって異なります。たとえば、頭語が「拝啓」であれば結語は「敬具」や「敬白」などとなり、頭語が「謹啓」であれば結語は「謹白」や「謹言」などとなります。
二十四節気と3月に使える時候の挨拶
挨拶状に季節の表現を添える際には、「二十四節気」を意識しておくと良いでしょう。ここでは、二十四節気の基本と、3月の時候の挨拶での注意点について解説します。
二十四節気とは
二十四節気(にじゅうしせっき)とは、1年を春夏秋冬の4つに分け、さらにそれぞれを6分割(計24分割)した季節のことです。たとえば、暦の上で春となることを示す「立春」や、昼と夜の長さが同じとなる「春分」、「秋分」などがこれに該当します。
また、二十四節気とは別途、季節の変わり目の目安となる「雑節(ざっせつ)」も存在します。
挨拶状で季節について触れる際には、この二十四節気と雑節を知っておくと良いでしょう。なぜなら、これを知らなければ、季節違いの表現を用いて、相手に違和感を与えてしまう可能性があるためです。
たとえば、「春分」は例年3月21日頃となりますが、「3月に使える時候の挨拶」などとして「春分の候」が挙げられていることも少なくありません。そのため、これが二十四節気であることを知らなければ、たとえば3月の初旬などに送る挨拶状で「春分の候」と記載してしまう可能性があるでしょう。
一方、二十四節気や雑節に関係のない「桜花の候」などは、暦とは関係なく、相手の地域で桜の花が咲く頃であれば使用することができます。
3月の挨拶状と二十四節気
3月に送る挨拶状で注意したい二十四節気と雑節には、次のものがあります。
- 啓蟄(けいちつ):3月5日頃
- 春分(しゅんぶん):3月21日頃
- 彼岸(ひがん):春分をはさみ前後3日ずつの計7日
これらの表現を使う際には、季節外れの表現となってしまわないよう注意しましょう。
なお、二十四節気ではない表現に、「春暖の候」など「春」が入ったものも多く存在します。二十四節気の「立春」(2月4日頃)から暦の上では春となり、5月5日頃の「立夏」までは春とされるため、3月に送る挨拶状であればいつでも「春」という表現を用いて問題ないでしょう。
3月の挨拶状で使える時候の挨拶一覧
3月に送る挨拶状で使える時候の挨拶には、次のものなどがあります。漢語調の表現と、口語調の表現とに分けて解説していきましょう。
なお、二十四節気に関連する表現はその旨を付記するので、使用する時期に注意することをおすすめします。
漢語調
3月に送る挨拶状で使える漢語調の時候の挨拶には、次のものなどが挙げられます。
・早春(そうしゅん)の候
・浅春(せんしゅん)の候
・春暖(しゅんだん)の候
・春陽(しゅんよう)の候
・春光(しゅんこう)の候
・春風(しゅんぷう)の候
・麗日(れいじつ)の候
・桜花(おうか)の候
・啓蟄(けいちつ)の候(二十四節気)
・春分(しゅんぶん)の候(二十四節気)
口語調
3月に送る挨拶状で使える口語調の時候の挨拶には、次のものなどが挙げられます。
・桃の節句も過ぎ ようやく春めいてまいりました
・桃の節句も過ぎ うららかな春の日が続いておりますが
・春の風が心地よいころとなりました
・春寒も緩みはじめ ようやく過ごしやすい気候となってまいりました
・やわらかな陽射しに春の訪れを感じる今日このごろ
・春まだ浅い季節ではございますが
・日ましに春めいてまいりました
・日を追うごとに春も深まる今日このごろ
・南のほうから桜の便りが聞かれる頃となりました
・草木の新芽が萌え出ずる頃となりましたが
・春風とともに花の香りが漂う頃となりました
・暑さ寒さも彼岸までと申しますが まだ寒い日が続いております(二十四節気)
こちらはあまり難しく考えず、自身の言葉でその季節を表現すれば問題ありません。ただし、挨拶状である以上、マイナスの表現は避けた方が良いでしょう。
季節を問わずに使える表現
季節を問わずに使える表現として、「時下」が存在します。こちらは安否の挨拶とつなげて、「時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます」などと使用することが一般的です。この表現は、ビジネス文書などでよく使用されます。
挨拶状において、この「時下」という表現を使用しても、失礼にはあたりません。しかし、季節感がない分、やや形式的な印象を与えやすいでしょう。
3月の挨拶状で使える結びの挨拶一覧
挨拶状では、結びの挨拶で季節感を表現することも可能です。ここでは、3月に送る挨拶状で使える結びの挨拶を紹介します。
3月に使える結びの挨拶
3月ならではの結びの言葉としては、次のものなどが挙げられます。
・浅春の折 どうぞご自愛くださいませ
・桜の便りが待ち遠しいこの頃 どうぞご自愛くださいませ
・寒暖定まらぬこの季節 ご自愛専一にてお過ごしくださいませ
・春の訪れとともに皆様にも幸せが訪れますようお祈り申し上げます
・新年度も変わらずお付き合いくださいますようお願い申し上げます
・春からも変わらぬご厚誼を何卒お願い申し上げます
・天候の変わりやすい花どきの季節 ご自愛専一にお過ごしくださいませ
・桜花爛漫の折り 皆々様には一層のご健勝を心よりお祈り申し上げます
3月ならではの表現を絡め、相手の健康や成功などを願う文言で締めると良いでしょう。
季節を問わずに使える結びの挨拶
結びの挨拶には、季節を問わずに使える表現も多数存在します。主な例は、次のとおりです。
相手の成功や発展を願う結びの挨拶
相手の成功や発展を願う結びの挨拶の例は次のとおりです。こちらは、挨拶状の宛先が企業や事業者である場合などに向いた表現です。
- 貴社のますますのご発展を心より祈念しております
- 貴社益々のご発展を心よりお祈りいたします
- 貴社のさらなるご発展を心よりお祈り申し上げます
- 〇〇様の一層のご活躍を祈念いたしております
- 貴社の一層のご躍進を心よりお祈り申し上げます
相手の健康や幸せを願う結びの挨拶
相手の健康や幸せを願う結びの挨拶の例は、次のとおりです。こちらは、個人宛である場合に向いた表現です。
- 皆様のご健康とご多幸を心よりお祈り申し上げます
- 時節柄くれぐれもご自愛くださいませ
- 皆様のご健勝を心よりお祈り申し上げます
- 末永いご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げます
- 〇〇様のご健康をお祈りしつつ 御礼申しあげます
今後のお付き合いやご指導をお願いする結びの挨拶
今後の変わらぬお付き合いや指導をお願いする結びの挨拶の例は、次のとおりです。顧客宛である場合や目上の相手に送る場合などに向いた表現です。
- 今後とも変わらぬご支援ご鞭撻を賜りますよう よろしくお願い申し上げます
- 引き続きご高配を賜りますよう宜しくお願い申し上げます
- 今後とも変わらぬ御厚誼を賜りますようお願い申し上げます
- 引き続きご愛顧のほど よろしくお願い申し上げます
- 引き続き倍旧のご厚情を賜りますよう お願い申し上げます
- 今後とも何卒お力添えいただきますよう お願い申し上げます
3月に送る挨拶状の注意点
せっかく挨拶状を送っても、マナー違反をしてしまうと失礼にあたる可能性があります。挨拶状を送る際には、次の点に注意しましょう。
・適切な敬称を使用する
・適切なタイミングで送付する
・誤字脱字に注意する
・原則として縦書きにする
・簡潔に記載する
適切な敬称を使用する
挨拶状を送る際には、宛名に適切な敬称を使用しましょう。挨拶状で使用する主な敬称は、次のとおりです。
・様:個人名に付けるもっとも一般的な敬称です。「挨拶太郎様」や、「株式会社挨拶 営業部 部長 印刷花子様」のように使用します
・先生:恩師や医師、弁護士などの士業に付ける敬称です。「挨拶太郎先生」や、「挨拶弁護士法人 弁護士 挨拶一郎先生」のように使用します
・御中:団体に就ける敬称です。「株式会社挨拶 御中」や、「株式会社挨拶 営業部 御中」のように使用します
なお、次のような表現は誤りですので注意してください。
- 「株式会社挨拶 挨拶太郎 社長様」:役職名に「様」は付けません。正しくは、「株式会社挨拶 社長 挨拶太郎様」です。
- 「株式会社挨拶 営業部御中 印刷花子様」:個人宛に送る場合には、部署に「御中」は必要ありません。正しくは、「株式会社挨拶 営業部 印刷花子様」です。
- 「弁護士 挨拶一郎 先生様」:敬称は重複させません。正しくは、「弁護士 挨拶一郎先生」です。
適切なタイミングで送付する
せっかく挨拶状を送っても、送るタイミングがずれてしまえば相手を心配させてしまう可能性があるほか、マナーを知らないと思われてしまいかねません。
挨拶状を送る際には、その挨拶状ごとの適切なタイミングを知り、その時期に合わせて送ることができるよう、可能な限りあらかじめ準備をしておくことをおすすめします。
誤字脱字に注意する
挨拶状を送る際には、誤字脱字に注意しましょう。また、誤字脱字を二重線や修正テープなどで直した状態で送ることは、マナー違反です。
そのため、印刷後に誤字脱字を見つけてしまったら、たとえ面倒であっても新たな用紙で作り直すようにしてください。
中でも、相手の氏名や社名、役職名などの誤りは大変な失礼にあたります。特にこれらについては誤りのないよう、あらかじめリストをよく確認しておくことをおすすめします。
また、相手から氏名や社名、住所など変更の連絡があった際には適宜リストを更新するなどリストを最新に保つ工夫をしておくと、挨拶状を送る際にスムーズとなるでしょう。
原則として縦書きにする
挨拶状は本来、縦書きをすることが正式とされています。最近では、比較的カジュアルな場面で送る挨拶状を中心に、横書きとすることも増えてきました。
しかし、たとえば弔事の場面では今も横書きにすることは一般的ではない他、フォーマルな場面で送る挨拶状は縦書きとした方が望ましいでしょう。
簡潔に記載する
挨拶状の本文は、一つの要件を簡潔に記載することが原則です。異なるいくつかの要件を一つの挨拶状にまとめたり、「追伸」などとして別の要件を記載したりすることは一般的ではありません。
また、プライベートなことや込み入った内容を挨拶状に書くことは避けた方が良いでしょう。
特に、ハガキで送る挨拶状は、他者の目に触れる可能性もあります。挨拶状は簡潔に記載し、親しい相手にさらに伝えたいことがあるのであれば、別途電話や対面などで伝えることをおすすめします。
まとめ
3月に送る挨拶状で使える季節の表現を紹介しました。
適切な時候の挨拶を記載することで、相手と季節感を共有することが可能となります。しかし、挨拶状を送る際、書き方や全体の構成などに迷ってしまうことも少なくないでしょう。
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