時候の挨拶とは、挨拶状やお礼状に季節感を添える表現です。季節の移ろいを大切にする日本独自の文化であり、挨拶状にその季節に合った時候の挨拶を記載することで、より趣のある挨拶状となるでしょう。
しかし、日ごろから挨拶状の作成に慣れていなければ、時候の挨拶の表現に迷ってしまうかもしれません。そこで今回は、11月に使える時候の挨拶についてくわしく解説します。ぜひ、挨拶状を送る際の参考としてください。
お礼状の基本マナー
はじめに、お礼状の基本マナーを確認しておきましょう。基本のマナーを知らずに送ってしまうと、せっかくのお礼状が失礼にあたってしまう可能性がある他、マナーを知らない人であると捉えられ相手からの評価が下がってしまうかもしれません。
すみやかに送る
相手から何かをしてもらったり何か品物をもらったりした場合には、できるだけすみやかにお礼状を送ることがマナーです。
お礼状を送る時期に、いつまでという明確な決まりがあるわけではありません。ただし、原則として、当日から遅くとも1週間以内くらいにはお礼状を発送すると良いでしょう。仮にお礼状を出すことが遅れてしまった場合には、お礼が遅れたお詫びを記載してください。
なお、例外的に葬儀で香典などをいただいた場合のお礼状はすぐには送らず、香典返しの品物とともに四十九日の忌明け後に送ることが通例とされています。また、お見舞いをもらった場合のお礼状も、退院後で構いません。
簡潔に記載する
お礼状は、相手からしてもらったことや品物などをいただいたことのお礼を伝える挨拶状です。そのため、できれば他のことはあまり記載せず、伝えたいお礼を簡潔に記載してください。
特に、企業宛にお礼状を送る場合には、複数の人の目に触れる可能性があります。たとえ相手企業の社長などと懇意にしている場合であっても、私信など余計なことは記載しないようにしましょう。
句読点を使用しない
お礼状を含む挨拶状では、句読点を使用しないことが伝統的なマナーとされています。その理由には諸説ありますが、主にいわれている理由は次のとおりです。
- 句読点が文章を区切る役割を持つことから、相手との縁を切ることを連想させてしまうため
- 句読点は子どもでも文章が読みやすくなるようにとの理由で使われ始めたものであることから、句読点を使うことは相手を子ども扱いしていることになるため
- 句読点よりも歴史の長い挨拶状には、句読点が馴染まないため
しかし、最近は比較的カジュアルな場面で送る挨拶状を中心に、句読点を使用することも増えています。
とはいえ、年配の方を中心に、今も挨拶状やお礼状に句読点を使うことに違和感を覚える人は存在します。また、弔事など伝統を重んじる場面で送るお礼状では、今も句読点を使用することは一般的ではありません。
そのため、原則として句読点は使用しないことを知ったうえで、挨拶状を送る場面や相手によって使い分けると良いでしょう。
誤字脱字に注意する
お礼状を作成する際には、誤字脱字に注意しましょう。特に、相手の氏名や役職などの誤りは大変失礼にあたります。そのため、何度も確認をして、誤りのないよう何度か確認しながら作成すると良いでしょう。
また、本文についても誤字脱字をしたまま送ってしまえば、間の抜けた印象となってしまいます。お礼状を作成したら再度文章の全体を確認し、誤字脱字がないかチェックしてから送ることをおすすめします。
なお、仮に作成後に誤字脱字を見つけてしまったら、二重線で直したり修正テープで直したりすることはマナー違反です。誤字脱字をしてしまったら、手間ではあっても、新たな用紙で作成し直すようにしてください。
適切な敬称を使用する
お礼状を送る際には、宛名に適切な敬称を付けるよう注意しましょう。お礼状で主に使用する敬称は、次の3つです。
・様
・先生
・御中
様
「様」は、お礼状で使用するもっとも基本的な敬称です。「挨拶太郎様」のように、氏名の後に記載しましょう。
1通のお礼状を複数名に宛てて送る場合には、お名前の後にそれぞれ一つずつ「様」を付けてください。複数名の氏名に対してまとめて一つの「様」のみで済ませることは、失礼にあたります。
また、「様」は、企業など団体内の特定の相手にお礼状を送る場合にも使用します。たとえば、「株式会社挨拶 代表取締役 挨拶一郎様」や、「株式会社挨拶 総務部部長 印刷良子様」などです。
なお、「様」は役職名には付しません。たとえば、「株式会社挨拶 総務部 印刷良子部長様」というのは誤った表現ですので、このような記載をしないよう注意しましょう。
先生
「先生」は、お礼状を送る相手が弁護士・税理士などの士業や恩師、医師などである場合に使用する敬称です。たとえば、「弁護士 挨拶太郎先生」や、「〇〇高等学校 印刷花子先生」などのように使用します。
なお、「先生」と「様」は併用しませんので、「挨拶太郎先生様」などとは記載しないように注意しましょう。
御中
「御中」は、お礼状を会社全体や部署全体など、団体宛に送る場合に使用する敬称です。たとえば、「株式会社挨拶 御中」や、「株式会社挨拶 総務部 御中」のように使用します。
「御中」は個人名には使用しませんので、「株式会社挨拶 営業部 印刷良子 御中」などとは記載しないように注意しましょう。
お礼状の基本構成
お礼状の文章の基本構成は、次のとおりです。この流れに沿って書いていくことで、基本的な内容のお礼状を作成することができます。順を追って解説していきましょう。
・頭語を記載する
・時候の挨拶を記載する
・お礼など本文を記載する
・結びの言葉を記載する
・結語を記載する
頭語を記載する
お礼状は、いきなり本文から書き始めず、頭語から書き始めることが一般的とされています。お礼状で使用されることの多い頭語は、次のとおりです。
・拝啓:もっともよく使用される頭語です。お礼状でも、こちらを使用することが多いでしょう。
・謹啓:目上の人へ送る場合や、かしこまった場面で送る挨拶状で使用します。
・拝復:相手への返信で送る挨拶状で使用します。
・前略:親しい相手へ送る場合に使用します。頭語を前略とした場合には、時候の挨拶は記載しません。
時候の挨拶を記載する
頭語に続けて、時候の挨拶を記載します。時候の挨拶とは、「立冬の候」や「初冬の候」など挨拶状を送る季節に合ったフレーズを記載することで、お礼状に季節感を添える表現です。
時候の挨拶では、「〇〇の候」のほかに「〇〇のみぎり」という表現もしばしば用いられます。どちらも「~の頃」という同じ意味ですが、「〇〇のみぎり」のほうは伝統的には女性が用いてきた表現であり、やや柔らかい印象となります。
11月に送るお礼状で使用できる時候の挨拶は後ほど上旬、中旬、下旬に分けてくわしく解説します。
なお、季節を問わずに使える表現に、「時下」が存在します。お礼状で「時下」を使用しても失礼ではありませんが、季節感がないぶんやや形式的な印象となってしまうかもしれません。
時候の挨拶の後には、相手の健康や成功を喜ぶ一文などを記載しましょう。この文章はお礼状の送り先が企業であるか個人であるかによって異なり、それぞれ次のとおりです。
・企業宛ての場合:事業の成功や発展を願う表現を記載します。「貴社ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます」や「貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます」などです。
・個人宛ての場合:健康や幸せを願う表現を記載します。「〇〇様におかれましてはますますご健勝のこととお慶び申し上げます」や「皆様益々ご清祥のこととお慶び申し上げます」などです
なお、ここまでを「前文」といい、すべてつなげると次のようになります。
- 「謹啓 向寒の候 貴社ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます」
- 「拝啓 小雪のみぎり 〇〇様におかれましてはますますご健勝のこととお慶び申し上げます」
- 「拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます」
お礼など本文を記載する
前文に続けて、お礼状の本文を記載しましょう。お礼状では、何についてのお礼状であるかがわかるように記載してください。
たとえば、次のような内容です。
・このたびは過分なお心遣いをいただきまして誠にありがとうございました
・このたびは弊社の開業にあたり結構なお品を頂戴し心より御礼申し上げます
・この度は私たちの結婚に際しましてご厚志を賜り心よりお礼申し上げます
また、お祝いでいただいた品物について簡単な感想などを記載しても良いでしょう。
たとえば、会社宛てにお花を頂いた場合には「社内が一層華やかになり、社員一同大変喜んでおります」、個人あてに食べ物などを頂いた場合には「嬉しい季節の味を家族の皆でありがたくいただきました」などです。
結びの言葉を記載する
本文の最後には、結びの言葉を記載しましょう。たとえば、「今後も変わらぬご厚誼を賜りますよう よろしくお願い申し上げます」などです。
また、時候の挨拶をあわせて、結びの言葉でも季節感を表現することが可能です。季節を問わずに使用できる結びの挨拶のほか、11月ならではの結びの挨拶についても、後ほど紹介します。
結語を記載する
最後に、結語で締めましょう。使用することができる結語は、使用をして頭語によって次のように異なります。
・頭語に「拝啓」を使用した場合:「敬具」や「敬白」など
・頭語に「謹啓」を使用した場合:「謹啓」や「謹白」など
・頭語に「拝復」を使用した場合:「敬具」や「拝復」など
・頭語に「前略」を使用した場合:「草々」など
なお、これらのほか、差出人が女性の場合には「かしこ」を使用することもできます。組み合わせを誤るとちぐはぐな印象となってしまいますので、基本の組み合わせを覚えておくと良いでしょう。
11月上旬に使える時候の挨拶
11月上旬には「立冬(りっとう)」があり、秋から冬へと向かう季節です。立冬とは1年を24分割した二十四節気の一つであり、立冬から立春(2月上旬)の前日までが暦の上での冬とされています。
立冬に入る日はその年によって11月7日もしくは8日と1日程度異なり、2022年では11月7日から11月21日が立冬です。立冬は、立冬の期間を指すこともある一方で、立冬の期間に入る日のみを指す場合もあります。
この時期に送るお礼状で使用できる時候の挨拶は、次のとおりです。立冬の前後で使用することのできる表現が変わると考えておくと良いでしょう。
漢語調の時候の挨拶
11月上旬に使える漢語調の時候の挨拶は、次のとおりです。
・晩秋(ばんしゅう)の候:11月6日頃まで使用できます
・深秋(しんしゅう)の候:11月6日頃まで使用できます
・初霜の候:11月上旬に使用できます
・暮秋(ぼしゅう)の候:11月6日頃まで使用できます
・立冬(りっとう)の候:11月7日頃から11月21日頃まで使用できます
・向寒(こうかん)の候:11月を通して使用できます
・深冷(しんれい)の候:11月を通して使用できます
・霜寒(そうかん)の候:11月を通して使用できます
・落葉の候:11月を通して使用できます
・霜秋(そうしゅう)の候:11月を通して使用できます
口語調の時効の挨拶
11月上旬に使える口語調の時候の挨拶は、次のとおりです。
・紅葉が一段と色を増す季節となりました
・木々の葉が見事に色づく季節となりました
・暦の上では冬を迎えましたが
・菊の香りただよう霜月となりました
・風に舞う木の葉に秋の深まりを感じる今日このごろ
・初霜が降りるころとなりました
11月中旬に使える時候の挨拶
11月中旬は、さらに寒さが増し、いっそう冬めいてくる季節です。ちょうど立冬の期間と重なりますので、そのことを意識した表現とすると季節感が表れやすいでしょう。
この時期に使用できる主な時候の挨拶は、次のとおりです。
漢語調の時候の挨拶
11月中旬に使える漢語調の時候の挨拶は、次のとおりです。
・立冬(りっとう)の候:11月7日頃から11月21日頃まで使用できます
・初冬(しょとう)の候:11月7日頃から12月6日頃まで使用できます
・向寒(こうかん)の候:11月を通して使用できます
・深冷(しんれい)の候:11月を通して使用できます
・霜寒(そうかん)の候:11月を通して使用できます
・落葉の候:11月を通して使用できます
・霜秋(そうしゅう)の候:11月を通して使用できます
口語調の時効の挨拶
11月中旬に使える口語調の時候の挨拶は、次のとおりです。
・枯れ葉舞う季節となり冬の訪れを感じる今日このごろ
・落ち葉舞い散る季節となりました
・立冬を過ぎ朝ごとに冷気が加わるこのごろ
・木枯らしが身に染みる今日この頃
11月下旬に使える時候の挨拶
11月の下旬には、小雪(しょうせつ)があります。暦の上でもすっかり冬となり、いっそう寒さが厳しくなる季節です。
小雪とは、二十四節気で立冬の次に訪れる期間であり、立冬を過ぎた11月22日頃から12月6日頃が小雪にあたります。なお、立冬と小雪の期間を合わせて「初冬」といいます。
この時期に使用できる時候の挨拶は、主に次のとおりです。
漢語調の時候の挨拶
11月下旬に使える漢語調の時候の挨拶は、次のとおりです。
・初冬(しょとう)の候:11月7日頃から12月6日頃まで使用できます
・小雪(しょうせつ)の候:11月22日頃から12月6日頃まで使用できます
・向寒(こうかん)の候:11月を通して使用できます
・深冷(しんれい)の候:11月を通して使用できます
・霜寒(そうかん)の候:11月を通して使用できます
・落葉の候:11月を通して使用できます
・霜秋(そうしゅう)の候:11月を通して使用できます
口語調の時効の挨拶
11月下旬に使える口語調の時候の挨拶は、次のとおりです。
・日ごとに寒さが身にしみる頃となってまいりました
・吐く息も白くなり冬の訪れを感じるこのごろ
・霜が降りるほど寒さが増してまいりました
・初雪の便りが届く季節となりました
11月に使える結びの挨拶の例文
挨拶状では、本文の最後に結びの挨拶を記載しましょう。結びの挨拶には1年を通して使えるものがある一方で、こちらでも季節感を表現することが可能です。
なお、結びの挨拶の前に「末筆ながら」と記すことで、結びの挨拶を述べることの前置きとなります。お礼状で年間を通じて使える結びの挨拶と、11月ならではの結びの挨拶は、それぞれ次のとおりです。
年間を通して使える結びの挨拶
年間を通じて使用できる結びの挨拶には、次のようなものがあります。結びの挨拶では、今後の変わらぬお付き合いやご指導を願う内容の他、相手企業の発展や相手の健康を祈る内容などを記載すると良いでしょう。
・今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます
・今後も変わらぬご厚誼を賜りますよう よろしくお願い申し上げます
・今後とも変わらぬご交誼の程よろしくお願いいたします
・貴社一層のご隆盛を心よりお祈り申し上げます
・貴社のますますのご発展を心より祈念しております
・皆様のご健康とご多幸を心よりお祈り申し上げます
なお、「ご厚誼」と「ご交誼」はいずれも「ごこうぎ」と読みます。このうち、「ご厚誼」が目上の相手に対しても使用できる一方で、「ご交誼」の方は「親しく交流する」という意味であり、目上の相手に対して使用することは適切ではありません。使い分けに注意しましょう。
11月ならではの結びの挨拶
11月ならではの結びの挨拶としては、次のようなものが挙げられます。
・日ごとにと寒さが募ってまいりますので どうぞお体をおいといくださいませ
・朝晩の冷え込みが厳しいこの季節 ご自愛専一にお過ごしください
・繁忙となる年末に向け ご自愛のほどお念じ申し上げます
・今年は例年になく寒い冬になるとのこと お身体にはくれぐれもお気をつけください
・小春日和が続くこのごろ どうぞお健やかにお過ごしくださいませ
秋から冬に移り変わるさまや日ごとに寒さがつのるさまを記したうえで、相手の健康などに配慮した記載をすると良いでしょう。
まとめ
11月に送るお礼状で使える時候の挨拶を紹介しました。季節に合った時候の挨拶を記載することで、挨拶状に季節感を添えることができ、より趣深いお礼状となることでしょう。
しかし、普段から挨拶状を送り慣れてない方にとっては、季節に合った時候の挨拶を選択することに迷ってしまう場合が多いかと思います。そのような際には、当サイト「挨拶状印刷.jp」のご利用がおすすめです。
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