これまで勤務していた会社を退職することとなった場合、退職の挨拶状を出す時期は、いつが適切なのでしょうか?
今回は、退職の挨拶状を出す時期や退職の挨拶状を送る際のマナーなどについて、詳しく解説します。マナーを守った挨拶状を活用し、お世話になった相手と退職後も良好な関係を築きましょう。
退職の挨拶状は出すべき?
そもそも、社長などではない一従業員の退職に際して、挨拶状は出すべきなのでしょうか?メールなどで済ませても良いのではないかと考える方もいるかと思います。
はじめに、挨拶状の役割を確認しておきましょう。
退職の挨拶状とは
退職の挨拶状とは、退職に際してお世話になった相手へ送る書状のことです。単に退職の事実や今後の進路などを伝えるのみではなく、これまでお世話になったことへの感謝の想いや今後の方向性などもあわせて伝えることが一般的です。
退職の挨拶状は出した方が良い
メールなどであっても、退職の事実を伝えることは可能です。
しかし、少なくとも、特にお世話になった取引先など感謝の想いを伝えたい相手や、今後もお付き合いを続けていきたい相手などには、書状での挨拶状を送っておくべきだといえます。なぜなら、挨拶状を送ることで、相手への敬意や感謝の想いがより伝わりやすくなるためです。
メールなど便利な通信手段が発達している昨今であるからこそ、退職など重要な局面で挨拶状を活用することで、より相手に想いを伝えることができるでしょう。
退職の挨拶状を出す時期
挨拶状は、その種類によって適切な時期が存在します。では、退職の挨拶状は、いつ出すのがマナーなのでしょうか?
退職1ヶ月前くらいまでに出すのが基本
退職の挨拶状は、退職のおおむね1ヶ月前までに出すことが基本であるとされています。この時期に退職を知らせて特に支障がない場合には、退職1ヶ月前までの送付を目安として挨拶状の準備を進めると良いでしょう。
遅くとも退職後3ヶ月以内には出すべき
職種などによってあまり早くに退職の情報を外部に出すべきではないとされる場合や、急な事情により退職が決まる場合もあるかと思います。また、退職前は引継ぎなどでバタバタしてしまい、退職1ヶ月前までの送付が難しい場合もあるでしょう。
退職前の送付が間に合わない場合であっても、退職後おおむね3ヶ月以内に挨拶状を送付できれば、失礼にはあたりません。
ただし、あまり遅くなってしまうと退職を知らない取引先が会社へ訪ねてくるなど不都合が生じる可能性がありますので、できれば退職後1ヶ月以内には相手へ届くよう手配するべきでしょう。
退職の挨拶状を出す時期が遅れてしまったら
退職の挨拶状を出す時期が遅れて退職後3ヶ月以上が過ぎてしまった場合であっても、可能な限り挨拶状は送付した方が良いといえます。
できれば早期に送ることが望ましいものの、たとえ遅くなってでも挨拶状を送ることで、相手を大切に想う気持ちや感謝の想いは伝わるためです。また、退職や転職前後にバタバタとしてしまう事情は、理解してくれる人が大半でしょう。
この場合には、ご挨拶が遅れたことへのお詫びを記載したうえで、たとえば「〇〇に転職しました」など、近況を記載すると丁寧です。
退職の挨拶状は誰に出す?
退職の挨拶状を出す相手に、特に決まりがあるわけではありません。一般的には、次の相手に送ることが多いといえます。
また、退職後に開業などを予定している場合には挨拶状を送っておくことで顧客候補となってくれる可能性があるため、開業の案内も兼ねてより広く送付することも検討すると良いでしょう。
お世話になった取引先
退職の挨拶状を最優先で送るべきなのは、お世話になった取引先です。
特に、長年のお付き合いがあった取引先の場合には、自分を育ててくれた場合も多いでしょう。退職の挨拶状を送り、しっかりと感謝の想いを伝えるようにしてください。
お世話になった同僚
お世話になった同僚に、退職の挨拶状を送る場合もあります。退職の挨拶状を送ることで、今後も付き合いが続けられる可能性が高くなるでしょう。
退職の挨拶状を出す際のマナー
退職の挨拶状には、さまざまなマナーが存在します。せっかく挨拶状を送る以上は、マナーを守ったしっかりとした挨拶状を送りましょう。
特に注意すべきポイントは、次のとおりです。
退職の挨拶状を出す時期に注意する
先ほど解説したように、退職の挨拶状には適切なタイミングが存在します。遅れてであっても出した方が良いとはいえ、可能な限り、遅くとも退職後3ヶ月以内(できれば退職後1ヶ月月以内)には送るようにしましょう。
あまりにも遅くなってしまうと、相手を軽視していると思われてしまうかもしれないためです。
頭語と結語を記載する
挨拶状をいきなり本題から書き始めるのは、適切ではありません。頭語から書き始め、頭語とセットになった結語で締めるのがマナーです。
頭語と結語はある程度機械的に使用する文言が決まりますので、基本を押さえておくと良いでしょう。
頭語
頭語には、「拝啓」や「謹啓」などさまざまな種類が存在します。退職の挨拶状を送る場合には、もっとも一般的な頭語である「拝啓」を使用すれば、ほぼ間違いないでしょう。
ただし、特に敬意を示したい相手へ送る場合には、「謹啓」などを使用します。なお、頭語には、「前略」なども存在します。
この「前略」は次で解説する時候の挨拶を省略する際に使うものですが、挨拶状で時候の挨拶を省略することは適切ではありません。そのため、退職の挨拶状の頭語で「前略」を使うケースは、ほとんどないといえるでしょう。
結語
文を締める結語は、使用した頭語によって使用できる言葉が決まっています。
たとえば、「拝啓」とセットになる結語は、「敬具」や「敬白」などです。また、「謹啓」とセットになる結語は、「謹言」や「謹白」などとなります。
頭語が「拝啓」であるにもかかわらず結語が「謹言」などではちぐはぐとなってしまいますので、組み合わせを誤らないように注意してください。
時候の挨拶を書く
挨拶状では、頭語の次にそのまま本題を記すのではなく、頭語に続けて時候の挨拶を記載してから本題に入ることがマナーです。時候の挨拶とは、季節に応じて相手の健康や繁盛を気遣う挨拶の表現です。
たとえば、「〇〇の候 皆様におかれましてはますますご健勝のこととお慶び申し上げます」のような記載がこれに該当します。
季節を表す表現
この、「〇〇の候」は、退職の挨拶状を送る季節によって適切な言葉を入れましょう。少し柔らかい表現として、「〇〇のみぎり」とすることもできます。
たとえば、次のような記載が代表的です。
- 1月:新春の候
- 2月:立春の候
- 3月:春暖の候
- 4月:陽春の候
- 5月:薫風の候
- 6月:入梅の候
- 7月:盛夏の候
- 8月:残暑の候
- 9月:初秋の候
- 10月:仲秋の候
- 11月:晩秋の候
- 12月:師走の候
また、個人的な挨拶状の場合には「〇〇の候」や「〇〇のみぎり」の代わりに、「さわやかな秋晴れの日が続いておりますが」「桜の花のたよりが聞かれるころになりました」などの文言を入れることもあります。
なお、季節を問わず使える表現として、「時下」があります。たとえば、「時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます」などと記載します。
便利な表現ではあり特にマナー違反というわけでもありませんが、季節感がないため、やや機械的な印象がすることは否めません。
相手を気遣う表現
季節の表現に続けて記載される「皆様におかれましてはますますご健勝のこととお慶び申し上げます」の部分にも、さまざまなバリエーションが存在します。
たとえば、挨拶状が企業などの事業者向けであれば、相手の商売繁盛を願う次のような表現を使うことが多いでしょう。
- 貴社にはますますご繁栄のことと心よりお慶び申し上げます
- 貴社ますますご清祥のこととお慶び申し上げます
- 貴社ますますご清栄のことと心からお喜び申し上げます
- 貴社ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます
一方、挨拶状を送る相手が個人であれば、相手の健康を願う表現を記載することが一般的です。たとえば、次のような表現となります。
- 皆様には益々ご健勝のこととお慶び申し上げます
- 〇〇様におかれましてはますますご健勝のこととお慶び申し上げます
季節や送る相手によって、適切な表現を心がけましょう。
退職先の悪口などは書かない
退職の理由などによっては、退職をした会社自体や上司、同僚などに対して、不満が溜まっている場合もあるかと思います。
しかし、退職先などの悪口は、挨拶状に書くべきではありません。退職の挨拶状は、あくまでも退職の事実と相手への感謝の想いを伝えるものであり、相手に気持ちよく受け取ってもらうことを重視すべきであるためです。
また、退職理由が書きづらい場合には、退職理由は「一身上の都合により」などと濁して記載して構いません。
たとえば、「上司からのパワハラで心身共に疲弊したためこの度退職いたしました」などと書かれても、相手としては対応に困ってしまうでしょう。さらに、会社の不平不満などを書いた挨拶状を取引先などへ広く送付してしまうと、会社から名誉棄損などとして訴えられてしまい、法的トラブルに発展するリスクもあります。
相手に感謝を伝える内容にする
退職の挨拶状には、単に退職の事実のみならず、相手へお世話になったことへの感謝の想いを記載しましょう。
たとえば、次のような文言です。
- 私が無事これまで勤められたのは温かな皆様のお力添えがあればこそと 心より感謝しております
- 長い歳月にわたり大過なく任務を果たすことができましたのはひとえに皆様方のご支援ご厚情によるものと心より感謝致しております
- 在職中は公私にわたり温かいご指導を賜り誠に有難うございました
これらはあくまでも一例であり、文言に明確な決まりがあるわけではありません。自分らしく感謝を伝える言葉を記載すると良いでしょう。
句読点は使わないのが基本
退職の挨拶状に限らず、挨拶状には句読点を使わないことが基本であるとされています。これは、挨拶状が、句読点が一般的に使われるようになる以前からの日本の文化であるためです。
また、句読点が文章の区切りに使われるものであることから、「縁を切る」を連想させてしまうためであるとの説もあります。
最近では、比較的カジュアルな挨拶状を中心に、読みやすさを重視して句読点が使われる場合もゼロではありません。
しかし、相手によっては「マナーを知らない」と捉えられてしまう可能性があります。そのため、特段のこだわりがないのであれば、やはり原則通り句読点は使わずに作成した方が良いでしょう。
誤字脱字に注意する
挨拶状を作成する際には、誤字脱字に注意しましょう。誤字脱字を修正テープなどで消すことはマナー違反ですので、あらかじめ誤りがないかよく確認してから印刷するようにしてください。
特に、相手の会社名や氏名、役職名などの間違いは非常に失礼にあたります。誤りのないよう、数回にわたってチェックすることをおすすめします。
中でも、役職名や名字などは、送付先リストのデータが古いとその後変わっている可能性があります。また、相手先に事務所移転などの情報が反映されていないと、せっかく送った挨拶状が届かずに戻ってきてしまうかもしれません。
送付先のリストについては、最新の情報が反映されているかよく確認しておきましょう。
退職の挨拶状を送る際の敬称の注意点
退職の挨拶状を送る際には、宛名に適切な敬称を付ける必要があります。誤った敬称を付けてしまうと、マナーを知らないと思われてしまうばかりか、失礼となってしまいかねません。
「様」「御中」「先生」を適切に使い分ける
退職の挨拶状の宛名に付ける敬称は、「様」「御中」「先生」の3択となるでしょう。これらの使い分けは、次のとおりです。
- 「様」:挨拶状が個人宛である場合に使用します。たとえば、「挨拶株式会社 代表取締役 挨拶太郎 様」や「挨拶株式会社 営業部 印刷花子 様」などです
- 「御中」:挨拶状が法人全体や部署全体など、団体宛である場合に使用します。たとえば、「挨拶株式会社 御中」や「挨拶株式会社 印刷事業部 御中」などです
- 「先生」:送付する相手が恩師である場合や、弁護士や税理士などの士業である場合などに、「様」の代わりに使用します。たとえば、「弁護士 挨拶次郎 先生」などです
なお、よくある敬称の誤りは、次のとおりです。このような記載をしてしまうことのないよう注意しましょう。
- 「挨拶株式会社 挨拶花子 部長様」:役職名に「様」をつけることは誤りです。この場合には、「挨拶株式会社 部長 挨拶花子 様」が正しい表記です
- 「挨拶株式会社 営業部 印刷太郎 御中」:個人名の後ろに「御中」が付くことはありません。この場合には、「挨拶株式会社 営業部 挨拶太郎 様」が正しい表記です。
- 「弁護士 挨拶次郎 先生様」:「先生」と「様」は重複して使いません。この場合には、「弁護士 挨拶次郎 先生」が正しい表記です。
連名で送る場合にはそれぞれに敬称を付ける
挨拶状を同一の会社の複数人宛に送りたい場合には、1枚にまとめるのではなく、個別で送るほうが丁寧です。しかし、たとえば一般家庭のご夫婦宛に送る場合などには、連名で送る場合もあることでしょう。
この場合には、「様」などの敬称は一つにまとめるのではなく、必ずそれぞれの氏名に付けるようにしてください。複数人の敬称を一つにまとめて送ることは、失礼にあたります。
まとめ
退職の挨拶状を出す適切な時期は、退職1ヶ月前から退職後3ヶ月以内です。適切な時期に大きく遅れてしまうことのないよう、計画的に準備をしておくことをおすすめします。 また、挨拶状にはさまざまなマナーが存在します。マナー違反の挨拶状を送ってしまわないためにも、ぜひ挨拶状の作成は、当サイト「挨拶状印刷.jp」をご利用ください
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